研究概要 |
楕円柱を空中で自由落下させたときに生じる自動回転運動に着目し,そこで起こる渦放出の機構や非定常的に生じる流体力について調べるために,一様流中で回転する楕円柱周りの流れ場及び流体力特性について調べた. まず,発泡スチロール製の楕円柱モデルで自由落下実験をおこない落下速度及び回転数の平均値を測定した.次に,その落下速度を一様流速とする一様流中において,測定された自動回転運動の回転数によって回転する楕円柱周りの流れの数値計算を行った.この場合,楕円柱に作用する流体力は楕円柱の回転に起因する流体力と楕円柱の渦放出に起因する流体力に分類できると考えられる.このうち,本研究では楕円柱の渦放出に起因する流体力を離散渦法の結果と有限体積法の結果との比較より明らかにした.ここで,有限体積法の結果は実験結果よりその妥当性が確認されている. 本研究で用いた離散渦法では物体表面に固定される束縛渦点により一様流中で回転する物体周りのポテンシャルフローを与え,物体から放出される渦点で剥離せん断層や渦を与える.渦点を放出しない場合の計算では,ポテンシャル理論により得られる抗力係数,揚力係数と一致し計算の妥当性を確認した.放出渦点を物体から放出する計算では,抗力係数,揚力係数がいずれもポテンシャル理論から正の方向に逸れ,粘性を考慮した有限体積法で得られる流体力の値に近づいた.ポテンシャル理論から流体力の値が逸れる位相では渦放出に起因する流体力が大きな影響を及ぼすと考えられる.特に,渦放出の影響は抗力係数に対してθ=-50°〜-160°,揚力係数に対してθ=0°〜-120°で顕著であった. また,質量の影響について調べるために材質の異なる2種類の物体の自動回転運動について調べたが、異なる材質間の落下速度,回転周波数,平板の長径に基づく周速比がほぼ一定であったため,質量による影響はほとんど見られなかった.
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