研究課題
平成16年度は、視覚障害者の基礎的な空間把握特性や探索歩行行動を明らかにするために、屋内に模擬実験空間を作製し、全盲の視覚障害者を主な対象として実験を行った。平成17年度では、16年度の結果を検証するために、実際の社会的空間での視覚障害者の空間把握や探索行動を明らかにする調査を行うとともにリクリエーションとしての空間利用が可能であるかを検証した。調査は、大阪市営定期観光バスの一日ツアーを利用し、さまざまな施設を訪問する。訪問施設は、海遊館、大阪ドーム、大阪城、水上バス、梅田スカイビルである。調査期間は、平成17年7月23日および10月23日である。調査内容は、各施設やツアー全体さらには、移動中について、空間把握だけでなくリクリエーション空間としての娯楽性や快適性、安全性について評価を行った。評価はアンケートにより行った。被験者は、全盲者5人(男性3人、女性2人)および健常者5人(比較対照群として男性3人、女性2人)の計10人である。結果、安全性、快適性、満足度など、多くの項目で、全盲者より健常者のほうが、よい評価になり、出入口の認識や自分の居場所の認識などは、健常者より全盲者はかなり低い評価結果となった。このような観光バスツアーでは、まず、バスから施設まで視覚障害者だけで到達することは困難で、介助者が必ず必要になる。模擬空間とは異なり、さまざまな情報が錯綜する実際の空間では、空間把握は難しい上に、施設内での設備や機材も不十分であり、さらには、施設職員の対応も十分ではないことから、低い評価になったと考えられる。しかし、梅田スカイビルの屋上展望では、光や風を受けることで被験者は楽しむことができ、また参加したいという評価をしている。改善しだいでは、視覚障害者が一人で参加することやリクリエーションとしてうまく利用できる空間の創造が可能であると考えられた。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
平成17年度日本建築学会近畿支部研究報告集 第45号, 計画系
ページ: 321-324
平成17年度日本建築学会近畿支部研究報告集 第45号,計画系
ページ: 325-328