研究概要 |
1)「ヴェルサイユ宮殿付属庭園の『諸学芸とミューズたちの泉』案-ヴェルサイユ宮殿および付属庭園における絵画や彫刻を媒体とした寓意表現について その4」 ヴェルサイユ(Versailles)宮殿は、天井画や庭園彫刻の図像プログラムという形で、人文主義的古代神話体系が17世紀の末に最後の輝きを放ったものである。このような側面から初めてヴェルサイユを捉えたのは美術史家マール氏の研究である。1963年にはギユー氏の謎解き本が刊行されたが、当分野の研究が盛んだったのは1980年代だった。1990年代には研究成果の一般書における普及が顕著である。 ヴェルサイユ宮殿の絵画・彫刻主題の解釈には、従来、当時の公式記録や証言が大いに援用されて砦た。そのなかでも国王付首席画家として王宮の様々な天井画や庭園彫刻の構想実施を指導したシャルル・ル・ブラン没後ほどなくして同時代人により執筆されたNIVELON, Claude: Vie de Charles Le Brun et description detaillee de ses ouvragesはとりわけ重要である。 本稿では2004年に初めて校訂版が世に出たこの史料を用い、音楽神でもあるアポロンが宰領するミューズたちとパルナス山の主題に基づく、ヴェルサイユ(Versailles)庭園の実現しなかった泉水案に注目し、その姿がどのようなものだったのかを示した。この主題は自らを太陽神アポロン(Apollon)に装えた1650〜70年代のルイ14世(Leuis XIV)の宮廷においてよく用いられ、1650年代から1670年代にかけてのフランス宮廷の図像プログラムのなかでも重要な位置を占めていたと考える。とくに、1660年8月26日の国王夫妻パリ入場式の際の仮設記念門が代表的な例としてよく知られている。
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