研究概要 |
現在の黒毛和種の供用頻度は,改良目標の画一化を背景にして著しく偏ったものとなっている.その供用頻度の偏りを均等に近づけることにより,改良速度に深刻な影響を与えずに遺伝的多様性をある程度維持できることをすでに明らかにしている.たとえば,但馬牛をモデルにして約27年後までのシミュレーションを行ったところ,供用頻度を完全な均等にした場合,改良速度は10%低下するものの近交の増加速度は29.8%抑制できることが判明した.また,2次計画法により遺伝的多様性を最大化した供用頻度では16.2%の改良の遅れが生じるが,近交の増加速度は62.3%抑制できた.2次計画法で得られた結果は,現状の但馬牛から達成できる遺伝的多様性の最大値であるとみなすことができる.今後はそれらの結果を比較の材料にして,遺伝的多様性と改良を任意に重み付けできるプログラムの開発を行い,但馬牛をモデルにした同様のシミュレーションを実施する.開発するプログラムには,遺伝的アルゴリズムだけでなく,改良も考慮した2次計画法も導入する予定である,昨年10月の科学研究費追加内定の連絡後,本年1月にワークステーションが納入され,ソフトウェアの設定後,テストを兼ねてこれまでに完了したシミュレーションを再度実施した.現在は,種雄牛の最適な供用頻度を決定するために遺伝的アルゴリズムの設計を行っている段階で,プログラムの作成,テスト運用の後,遺伝的アルゴリズムを動作させる各種オペレータの設定を行い,本格的にシミュレーションを実施する計画である.
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