研究課題
本年度は,新型コロナウイルスのまん延に伴うパンデミックによって,科学的不定性が大きい状況での「科学をめぐる専門的判断」のあり方が,社会的に大きく問われる状況であった.現状への詳細な観察により,様々な問題が明らかになった.たとえば,1)科学的根拠が十分確立されていない知見が確実であるかのように社会に流布された結果,後に誤りが明らかになってきても,古い知識に基づいた対応が引き続き行われてしまう問題,2)規範的な議論によって政策決定されるべき論点が専門家と呼ばれる医学者集団によって決定されてしまう問題,3)規範的議論を行うべき法律家や政治の側が自らの問題であることに気付けない、等が指摘できる.1)では,政策決定に関わる助言を行う専門家の議論がクローズドで行われ,助言の科学的根拠が明らかにされない、2)では社会的公平性に関わる論点まで科学者が実質的判断を行っている現象が観察された.本研究グループでは,これらの問題を科学技術社会論や政治学,法学の観点から詳細に観察・分析した.1)については,感染制御策の経済性を解析し論文発表した.感染症分野だけでなされた判断の恣意性が可視化され,物理学会で招待講演として取り上げられるなど内外でも大きな反響を読んだ.また,3)の問題の存在を可視化するために,科学的・医学的知見では定まらない,社会的公平に関わる規範的問題が存在することを法学雑誌に論文掲載した.この論文に触発され,法学的議論が促進された事実は,私たちがこれまで明らかにしてきた科学的不定性への理解が正しかったことを示している.コロナ問題から見えて来た専門知の問題点を整理し、不定性のある中での専門知の在り方についての提言を行うべく準備を行っている.成果は学会シンポジウムを含む講演,学術雑誌等で発表したが、一般読者が目にする媒体での執筆、記者会見などのアウトリーチ活動も積極的に行った.
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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論座
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