研究課題/領域番号 |
16H01953
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
鶴島 博和 熊本大学, 教育学部, 教授 (20188642)
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研究分担者 |
櫻木 晋一 下関市立大学, 経済学部, 教授 (00259681)
亀谷 学 弘前大学, 人文社会科学部, 講師 (00586159)
菊池 雄太 立教大学, 経済学部, 准教授 (00735566)
城戸 照子 大分大学, 経済学部, 教授 (10212169)
西村 道也 福岡大学, 経済学部, 講師 (10599814)
新井 由紀夫 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (30193056)
徳橋 曜 富山大学, 人間発達科学部, 教授 (30242473)
図師 宣忠 近畿大学, 文芸学部, 准教授 (60515352)
阿部 俊大 同志社大学, 文学部, 准教授 (60635788)
西岡 健司 大手前大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (70580439)
名城 邦夫 名古屋学院大学, 経済学部, 教授 (90097684)
山田 雅彦 京都女子大学, 文学部, 教授 (90202382)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 銭貨 / 銀貨 / 銅貨 / 銭貨製造人 / 西ユーラシア / 前近代 / 流通 / 金属組成 |
研究実績の概要 |
平成29年5月20日、一橋大学で開催された第67回日本西洋史学会でドイツのライプツヒ大学准教授ウェルナー・シェルチェンツ氏を招いて、中世東欧とロシアの商品貨幣流通に関する論文報告を行った。ついで21日に立教大学で第1回目の科研集会を行ない、平成28年度の研究の総括と反省、29年度のスケジュールと研究到達を定めた。平成28年度の科研費研究報告書、鶴島博和編『前近代ユーラシア西部における貨幣と流通のシステムの構造と展開(Ⅰ):ポスト・ローマ、イングランド、イタリア、ドイツ』熊本、2017年7月1日、369 ppを刊行した。 8月22日、大阪市立大学文化交流センター・ホールで、社会経済史学会(近畿部会)との協賛で、、冶金、金属学の専門家も交えての「前近代における貨幣製造の技術的射程」と題するシンポジウムを行った。よく23日には同志社大学で、第2回目の科研集会を行ない、参加者全員が研究の成果を報告した。 9月には、研究代表鶴島博和が関係した、熊本県益城町から大地震後に発見された1万枚を優に超える江戸期の銭貨の分析と分類を、研究分担者櫻木晋一をリーダーに開始した。この作業は断続的に平成30年2月まで続き、今年中にその報告書を刊行する予定である。研究代表者鶴島博和は、9月にイギリスのケンブリッジ大学とスペインのマドリッド自治大学、バジャリヤド大学、カタルニア歴史民俗博物館を訪問し平成30年度の国際シンポジウムの日程調整を行った。 11月3日と4日には、比較史的視点確立のために、『東ユーラシアにおける中世貨幣』と題する国際シンポジウムを下関市立大学で開催し、幅広い専門家を招いて活発な議論を展開した。その成果報告書を現在準備中である。平成30年3月3日に熊本大学おいて第3回目の研究集会を開催し、平成29年度の研究の総括と反省を行ない、平成30年度の研究スケジュールと目標を確定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シンポジウムに関しては、昨年度予定した通りに進み、議論も活発に行われ、国際共同研究組織構築の準備も進んでいる。8月の大阪市立大学でのシンポジウムでは、ローマ、イタリア、イギリスの銭貨製造技術を日本のそれと比較し、さらには金属学の専門家との議論を通して、大きな知見を得た。この成果は、11月に行われた東アジアを中心とした比較のための国際シンポジウムでさらに深化を遂げることができたと判断して良いだろう。 論文報告に関しては、ライプツヒ大学のシェルチェンツ准教授の東欧からロシアにかけての商品貨幣流通に関数る報告が、11月のシンポジウムの報告者であった、オックスフォード大学のマレク・ヤンコビッック博士の、鉛の同位体元素であるビスマスの分析を用いての銀のイスラーム圏からバルト海方面への流れと連動して考察することを可能とした点は、この科研研究全体をまとめる点からも意味があった。 論文に関しては、今年7月に大部の報告書を刊行し、各研究員の研究報告を収蔵したが、個別論文としては、鶴島と亀谷がヨーロッパの学会誌に、鶴島が日本の学会誌に掲載した以外は、低調であったが、これは各自が現在執筆準備中という時差の問題である。実際研究集会やシンポジウムでは、各自の新しい研究成果が開示されている。 当初予定していた、P. Spufford, Money and Its Useの翻訳は、原稿はほぼ完成しているものの、著者の逝去や予定していた出版社の解散という事態に陥り頓挫している。現在、出版社を探している途中である。論文を書くための準備期間であることや出版社の突然の解散以外は、研究は当初予定した通り概ね順調に進展していると言ってよいでああろう。
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今後の研究の推進方策 |
シンポジウムに関しては、平成30年度は、地中海世界の前近代における貨幣と銀の流通に焦点を当てる。そのために、イギリス、ケンブリッジ大学付属で世界の貨幣史研究の中心であるフィッツ・ウィリアム博物館から後期ローマ史と中世イタリア史の貨幣の専門家2名、スペインから、中世イスラームの貨幣史の指導的あるいは代表的専門家3名、これに同じスペインでもキリスト教圏の二つの王国に関関する貨幣史について2名の代表的な専門家を、北アフリカのイスラーム圏の指導的な研究者をアメリカから招き、これに、科研研究に携わっている、西村、阿部、亀谷が対抗する報告を行う予定である。 これを受けて31年度は北のバルト海から東欧、ロシアの商品貨幣流通に関する国際シンポジウムを行う予定である。そのため、代表者鶴島は、7月から、イギリス、フランス、ベルギー、ドイツ、北欧の専門家との研究打ち合わせを行う予定である。 これらの研究は、昨年度に行ったライプツヒ大学のシェルチェンツ准教授の東欧からロシアにかけての報告が、11月のシンポジウムで行ったオックスフォード大学のマレク・ヤンコビッック博士の、ビスマス分析を用いての銀のイスラーム圏からバルト海方面への流れを組み込むことで、西ユーラシア全域の商品貨幣の製造と流通の問題に照射することができると判断している。 さらにこれらの研究成果は、31年度のイギリス・リーズ国際学会でのセッション運営や科研報告書、各自の個別論文、予定されている翻訳や現在構想中の日本国内での前近代における貨幣史の概説書や専門書、そしてイギリスのフィッツ・ウィリアム博物館のチームと計画しているBritish Archaeological Reportでの専門書執筆へと研究を推進し、広く全世界に公開していく予定である。
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