研究課題
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は、非侵襲的な先端的がん治療法として脳腫瘍等の難治性がんに高い治療効果が認められている。しかし、現行の臨床研究で用いられているホウ素化合物(第2世代)は、がん選択性、及び、集積性が不十分であることが指摘されている。本研究課題では、がん腫に応じて標的能をオンデマンドに制御可能なテーラーメード型ホウ素薬剤を開発する事を目的としている。令和元年度において、がん受容体を標的可能な抗体結合型ホウ素薬剤の開発を目指し、ヒトIgG抗体のFc部分と特異的な相互作用認識を示すZ33ペプチドを利用することで、治療に必要な抗体を、オンデマンドにホウ素化合物と簡便に結合、及び、がん細胞標的を可能にする薬物送達技術の構築を行った。上皮成長因子受容体(EGFR)を標的とするセツキシマブ抗体を用い、Z33ペプチド結合型ホウ素薬剤Z33-DB(200 nM)とセツキシマブ抗体(100 nM)の複合体をEGFR高発現の類表皮がんA431細胞に添加し培養(24時間、37℃)した結果、細胞膜への効率的なホウ素化合物の集積を確認した。また、EGF(100 nM)の同時添加でマクロピノサイトーシスを誘導させることで、ホウ素化合物の細胞内移行が顕著に促進した。また同条件下でA431細胞を処理したのち、熱中性子線照射(90分間)、及び、コロニーアッセイを行った結果、マクロピノサイトーシス誘導でのZ33-DB/セツキシマブ複合体の細胞内移行促進によってBNCT活性が上昇することが確認された。これらの結果より、抗体での受容体認識、及び、細胞膜への集積後におけるマクロピノサイトーシス誘導でのホウ素化合物の効率的な細胞内取り込みが、BNCT活性の上昇に大きく寄与していることが示唆された。目的ホウ素化合物の生理活性を、オンデマンドに標的細胞で効果的に発揮するための重要な基礎的技術・知見である。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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