研究課題
Dorsal forrunner cell(DFCs) の移動とKupffer's vesicle 形成におけるWwtr1の機能解析を行うことを目的とした。DFC特異的に蛍光を発現するTg フィッシュを作製し、DFCのKVへの移動とKV形成に至るまでの過程を可視化し調べることを計画した。DFC の可視化のために、sox17 プロモーター依存性にgreen fluorescent protein (GFP) をはつげんするtransgenic fish (Tg)、Tg(sox17:gfp) を作製して、6 somite stage (ss) からKV 形成までのタイムラプス観察を行った。その結果DFCの移動とKV の形成過程をイメージングすることができた。また、Wwtr1遺伝子欠損個体を作製することができた。当初の予測通り(Yap1による機能代償機構が働くことを予想)、Wwtr1個体だけではKV形成に異常を認めかなった。このためにYap1の欠損個体も作製して、Wwtr1/Yap1の両遺伝子欠損個体 (Wwtr1/Yap1 DKO)を得ることができた。このWwtr1/Yap1DKO個体は、生後2週間ですべて死亡し、Tg(myl1:gfp)個体との交配により、心筋細胞(心臓)を観察すると心臓が逆位(右側心臓)あるいは、正中位となることから、KV形成あるいは、KVの繊毛形成にWwtr1/Yap1 を介した転写が重要であることを示すことができた。KV内の繊毛を可視化するためにTgBAC(UAS:Arl13b-EGFP/ mCherry)を計画した。Arl13b-EGFPで繊毛の観察ができることを確認した。KVと繊毛の両者の同時観察を行うために、Tg(actb1:arl13b-EGFP)と Tg (sox17:mCherry)を作製した。
1: 当初の計画以上に進展している
当初予定していた左右非対称決定機構におけるHippo シグナル調節の解明として、Hippo シグナルの最終決定転写共役因子であるWwtr1とYap1 の遺伝子欠損ゼブラフィッシュを得ることができた。この成果は、Hippo シグナルよる心臓の位置決定機構にHippo シグナルが必須であることを確定する結果となり、今後のKVの移動・形成・成熟機構と引き続くKV内の繊毛形成過程のどこでHippo シグナルがかかわるのかを明らかにするための重要な結果となった。Wwtr1/ Yap1の両遺伝子欠損個体とKVの可視化、繊毛の可視化ができるTg フィッシュを交配することにより、どの過程でのWwtr1 Yap1依存性転写の必要性を今後検討可能となった。実際にKVの2色(GFP, mCherry)のTg個体と全身性に繊毛を可視化できるTg8actb1:arl13b-egfp)の交配をするめることによりKVと繊毛の両者の可視化が可能となったので、遺伝子欠損個体との交配を順調に進めているところまで、進捗している。これは、当初計画よりも進んでいる状況と判断している。さらに繊毛の回転までも観察可能なlight sheet顕微鏡を用いて繊毛の長さや回転の解析も可能でありWwtr1/yap1欠損個体で繊毛とこれらの転写共役因子の機能の関係を証明できる実験系を確立することができた。さらにKV でのCaイメージングを可能とするためにTg(sox17:gal4FF)個体を作製することで、Tg(uas;GCamP7)と交配し、sox17 陽性細胞でのCaイメージングができるように、現在交配するところまで順調に進んでいる。
Wwtr1/yap1の転写調節が、KV形成あるいは、繊毛形成のどの段階で重要であるかを確定するためには、上述したKV可視化Tg 繊毛可視化Tg あるいは両者を詳細に観察することが今後の実験計画となる。顕微鏡技術として、light sheet顕微鏡のみならず、可視化個体を固定した後の超解像度顕微鏡を用いたKVの大きさ、繊毛の長さ、本数、傾きなどの定量的解析を行う計画である。また、Wwtr1/yap1の欠損により、如何なる遺伝子の転写が制御されているのかを調べるために、両欠損個体のRNA-seqを行い遺伝子発現を調べる計画である。このためには、 左側側板中胚葉、あるいは両側側板中胚葉の細胞を蛍光ラベルしてその細胞群での発現遺伝子の差異を検討することが重要なために、現在Southpaw BAC cloneとone-eye pinhead BAC cloneの下流でsuperfolding GFP( folding時間が短く初期発生で蛍光が観察可能)を発現するTgを作製することを計画している。この個体の作製が完了した際には、Wwtr1/yap1のDKO個体との交配により両遺伝子欠損により発現が低下あるいは増加している遺伝子を側板中胚葉内で網羅的に探索することが可能となる。またleftyのBACcloneも得ることにより、midline barrieer として働く遺伝子の発現の増加・減少の有無についても両遺伝子欠損個体で可能となるために、Hippoによる左右非対称性決定機構の解明につながる実験系を構築することが可能である。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Developmental Cell
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http://www.z-cv.jp/index.html