研究課題
Kupffer's vesicle(KV)形成へのHippo シグナルの最終標的転写共役因子Yap1 Wwtr1の効果をみるために、当初はmorpholinoを使用してKVの大きさ、繊毛の数を検討した。その結果Wwtr1のmorphantで有意にKV 形成障害が観察された。このために、Wwtr1 Yap1の変異体を作製して、off target効果ではなく、KV への影響がみられるかを確認した。Wwtr1 knockout (KO) とYap1 hetero (HT) の個体で、心臓が正中位から右側に位置する個体が多く観察された。この表現型が、KV 形成異常に起因するものか否かを調べたところ、KVの大きさならびに繊毛の長さ・数にはWwtr1 KO Yap1wild type (WT)の胚との差を認めなかった。この結果はWwtr1, Yap1がKV 形成から左右非対称性を生じているのではない可能性が示唆された。心臓のjogging異常が生じるために心筒形成と位置異常が生じるが、そのjoggingには、心筋前駆細胞の遊走が必須であり、この遊走を決定する左右差発現分子の差異が表現型の異常を生じる原因となっていることが考えられた。Yap1KO Wwtr1 HTは、二股心臓が生じやすいことからも、心臓前駆細胞が移動するために、Wwtr1, yap1がどこで機能するかを突き止める必要がある。このために、内胚葉をsox17で追跡してKVだけでなく、もう少し発生の進んだ段階での、内胚葉細胞群の形態異常の有無を検討することが必要であるとの結論となった。
2: おおむね順調に進展している
研究開始から、左右非対称をモニターリング可能なトランスジェニックゼブラフィッシュを順調に作製してきている。Lefty1, lefty2, Pitx2 の発現を調べる個体の作製は完了している。当初Wwtr1 のmorphantでの左右非対称性の表現型の異常がみられることから、Hippo シグナル異常がKupffer's vesicleの形成異常が原因であると予想して、本課題を提案していた。しかし、Wwtr1の変異体ではKV の形成に異常を認めなかった。これは、Yap1の発現が補完している可能性もあり、Wwtr1 KO, Yap1HT で心臓逆位がみられることからも左右非対称性にHippoが関係することは確定的となった。しかし、KV形成にHippoが関与しないことから、形態的な問題ではなく、KVの機能的な問題が生じている可能性が強く想定された。このKVの機能異常を証明するために、KVでのCa2+の可視化個体を作製して、Wwtr1 KO,Yap1 HTの個体での観察をするべく同個体を飼育中である。また、繊毛の形態異常はないが、繊毛機能の回転を可視化できる個体の作製も完了しており、Wwtr1 KO/ yap1 HTの個体で繊毛を姜申できるように、順次トランスジェニック個体を準備している状況である。
本課題申請で掲げた左右非対称性におけるHippoシグナルの関与を証明するためには、どの細胞レベルでの異常が左右非対称性を生む原因となっているかを突き止める必要がある。このためには、Wwtr1 KO/ Yap1 HTの個体で、まず心臓だけではなく膵臓や他の臓器でも左右非対称性が生じているのかを確認する必要がある。この確認ができた際には、KVに依存した左右非対称性異常がKV機能異常が原因であることが、強く示唆されることになる。従って、まずはWwtr1 KO/ Yap1 HT個体の臓器配置異常を至急確認する。KVの機能異常が強く疑われた場合には、その原因がCa2+ の反応性の非対称性にあるのか?また、繊毛の回転異常に起因するのか?などどの機能異常があるのかを突き止めていく方針である。KVの機能異常がなくてもWwtr1 KO/ Yap1 HTでは、心筒形成の異常が生じているのは明からである。本異常が、Wwtr1 Yap1の発現低下が心筋前駆細胞でおきていることが問題なのか?あるいは心筋前駆細胞の周囲の足場細胞である内胚葉細胞に問題があるのかを切り分けて調べていく必要がある。sox17 陽性内胚葉細胞の位置異常がないかもWwtr1 KO/ Yap1 HT個体で調べることにより、Wwtr1 KO/ Yap1 HT個体のどの細胞の異常が心筒の形成異常となるかを明らかにすることができると考えている。
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http://www.z-cv.jp/index.html