研究課題/領域番号 |
16H02705
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研究機関 | 国立極地研究所 |
研究代表者 |
高橋 晃周 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (40413918)
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研究分担者 |
綿貫 豊 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (40192819)
塩見 こずえ 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (50756947)
國分 亙彦 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (90580324)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 海洋生態 / 海洋保全 / 環境変動 / 動物行動 / バイオロギング |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ベーリング海北部の環境変動と人間活動が海鳥類に与える影響を評価することである。近年ベーリング海北部では、海氷が減少して水温が上昇し、南方系の動物プランクトン・魚類が分布を拡大するなど、物理・生物環境が急速に変化している。また北極海航路を利用する船舶の増加による環境への影響が懸念されている。それにも関わらずこの海域で多数が繁殖する海鳥類の生態に関する知見は乏しく、環境影響の評価はなされていない。今年度は本研究の初年度にあたり、7月中旬から8月下旬にかけてベーリング海北部セントローレンス島において海鳥類の野外調査を実施した。この島で繁殖する動物プランクトン食性のエトロフウミスズメと魚食性のハシブトウミガラス、ウミガラス、ミツユビカモメの計4種にGPS記録計、深度記録計を取り付けて数日後に回収する作業を実施した。また記録計の装着・回収時に安定同位体分析用の血液や羽根のサンプルを採取し、また食性解析用の親の吐き戻しのサンプルの採取、雛に持ち帰った餌の観察をおこなった。その結果、これら4種の海鳥は、いずれも島の北東部に広がる浅い(<40m)陸棚海域を繁殖地から最大で50km程度まで移動して採餌を行っていることが明らかになった。最も行動範囲が広いウミガラスにおいては行動範囲の一部が島の東側の主要な船舶航行ルートと重複する可能性が示された。また深度記録計を装着・回収できたハシブトウミガラスでは、夜間は表層で、昼間は海底付近まで潜水しており、陸棚域の水塊を表層から海底まで幅広く利用していることがわかった。1980年代にこの海域のウミガラス類の主要な餌種であった海氷依存性の魚類ホッキョクダラは、今回の調査では餌として記録されず、ウミガラス類の食性が温暖化に関連した陸棚域の魚類の分布変化の影響を受けている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね予定通り野外調査を実施して記録計の装着やサンプル採取を実施し、データ解析を進めることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はセントローレンス島で初めて調査を実施するにあたり、現地の先住民との連絡調整や記録計の装着・回収に適した調査地の選定など、調査の立ち上げに時間と労力を費やす必要があった。今後、今回選定した調査地を継続的に利用することで、効率的な野外調査の実施が可能になると考えられる。
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