研究課題/領域番号 |
16H02705
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研究機関 | 国立極地研究所 |
研究代表者 |
高橋 晃周 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (40413918)
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研究分担者 |
塩見 こずえ 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (50756947)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 海洋生態 / 海洋保全 / 環境変動 / 動物行動 / バイオロギング |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ベーリング海北部の環境変動と人間活動が海鳥類に与える影響を評価することである。近年ベーリング海北部では、海氷が減少して水温が上昇し、南方系の動物プランクトン・魚類が分布を拡大するなど、物理・生物環境が急速に変化している。また北極海航路を利用する船舶の増加による環境への影響が懸念されている。それにも関わらずこの海域で多数が繁殖する海鳥類の生態に関する知見は乏しく、環境影響の評価はなされていない。今年度は本研究の3年目にあたり、7月中旬から8月下旬にかけてベーリング海北部セントローレンス島において海鳥類の野外調査を実施した。今年のベーリング海は春の海氷の張り出しが記録的に少なく、通常ベーリング海北部で形成される冷水塊(cold pool)が消失するなど、極端な海洋環境であった。セントローレンス島の海鳥についても大量死が観察され、多数の死体が島の海岸に打ち上げられるなど、異例の状況となった。このため記録計の装着は行わず、昨年度装着したジオロケータの回収作業と繁殖失敗の状況把握・原因解明に向けた調査を実施した。その結果、ウミガラス・ハシブトウミガラスについては昨年まで多数が繁殖していた海岸の崖の多くで全く繁殖が見られず、また300羽近い死体を海岸で発見した。エトロフウミスズメ、コウミスズメについては、昨年まで半数近くが繁殖に成功していた調査地で、ほぼ完全に繁殖に失敗したことが明らかとなった。今後採取した餌や血液・羽根等のサンプルを分析し、海氷消失がどのようなプロセスで海鳥に影響を与えたのか検討していく。一方、ジオロケータについてはエトロフ・コウミスズメ、ミツユビカモメの3種からの回収を実施できた。その結果から、エトロフ・コウミスズメが秋には北上してチャクチ海を利用し、その後冬にかけてカムチャツカ半島東岸を南下してオホーツク海などで越冬することが初めて明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は海鳥の大量死や繁殖失敗のために記録計を装着することはできなかった。ただ、ジオロケータの回収は概ね実施でき、またベーリング海の春の海氷張り出しが記録的に少ない異例な年に野外調査を行えたことで、海洋環境の年変化が海鳥に与える影響について貴重なデータ・セットを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、ベーリング海北部では海氷状況の変化にともなう極端な海洋環境が見られ、セントローレンス島の海鳥にも大量死や繁殖失敗といった極端な生態現象が見られた。海洋環境変化と海鳥の生態変化とのリンクを明らかにするため、ベーリング海北部で観測船による海洋生物調査を実施している北海道大学のチームなどとの連携を深めて研究を推進していく。
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