研究課題/領域番号 |
16H02826
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
田中 覚 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (60251980)
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研究分担者 |
長谷川 恭子 立命館大学, 情報理工学部, 任期制講師 (00388109)
坂野 雄一 国立研究開発法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳機能解析研究室, 研究員 (10443904)
岡本 篤志 大手前大学, 史学研究所, 研究員 (30438585)
LOPEZ Roberto 立命館大学, 情報理工学部, 准教授 (80395144)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 3次元計測 / ポイントクラウド / 透視可視化 / 文化ビッグデータ |
研究実績の概要 |
1. 開発中の半透明可視化手法を、京都・祇園祭の山鉾巡行のルート変更シミュレーションに適用し、山鉾の電線や看板との衝突を警告する可視化に成功した。この成果は、3次元計測分野の著名な国際会議 ISPRS Geospatial Week 2017や国際学術論文誌で発表された。 2. 主成分分析を利用して3次元計測データからエッジを抽出し、半透明可視化の視認性を向上させる新手法を開発した。この手法を京都・祇園祭の八幡山、宮城県・瑞巌寺の洞窟遺跡などに適用し、有効性を確認した。研究成果を、国際会議 JSST 2017、Culture and Computing 2017で発表した。また、第1回ビジュアリゼーションワークショップでポスター論文を発表し、2件の受賞(最優秀賞と優秀賞)を獲得した。 3. 半透明可視化と立体視を融合する研究に着手した。我々の半透明可視化手法において局所的な不透明度を制御することにより、半透明立体視の奥行き感を向上できることが分かった。研究成果を医用ボリュームデータに適用し、国際会議 InMed 2017 などで発表した。 4. 開発中の半透明可視化手法において、描画の基本形状の3次元点を拡大・縮小することで描画速度が大幅に向上し、不透明度を対話的に制御できることが分かった。研究成果は、国際学術論文誌に掲載された。 5. 開発中の半透明可視化手法を、複雑形状を有する高エネルギー放射線実験装置に適用し、特徴領域の強調可視化とも組み合わせることで、有効な放射線シミュレーション可視化を行えることが分かった。研究成果は国際学術論文誌に掲載された。 6. 提案手法を用いた文化財の可視化は、国内外で注目されつつある。2017年度は、マレーシアとインドネシアで招待講演を行った。国内では、著書を2冊刊行(いずれも1章を担当)し、研究成果を広く公開できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要の項で述べたように、研究成果は着実にあがっており、国内外の学会や学術論文誌でも多くの論文を発表している。特に、3次元計測分野の権威ある国際学会 ISPRS の国際会議において、2年連続で論文が採択されたことには大きな意味がある。また、初年度に引き続き、複数の学会賞も得ており、国際学会での招待講演も行っている。これは、我々の 研究が、すでに国内外で高い評価を得ていることを示している。 次に、具体的な研究目標に沿って進捗を述べる。 まず、我々の半透明可視化の特徴である「不透明度勾配」を有効活用した視認性向上に関しては、有形文化財の3次元計測データや、医用ボリュームデータを3次元点群化したデータにおいて、成果があがっている。 次に、3次元点群データの半透明可視化を立体視に応用する研究に関しては、「研究実績の概要」で述べたように、まずは医用ボリュームデータに関して成果があがりつつある。次年度には、この成果を有形文化財の3次元計測データにも適用していく。 次に、3次元点群から特徴を抽出し、半透明可視化に活かす技術に関しては、当初はMPU法による関数補間を利用して高曲率部を計算することを想定していた。この方向性も、なお検討を続けているものの、まずは、主成分分析を用いることで、ほぼ同等な成果を上げつつある。「緩い特徴」(壁面レリーフの微妙な凹凸など)の可視化にも適用できそうな、興味深い実験結果も得られつつある。 最後に、研究成果を活かしたVRコンテンツの作成に関しては、俯瞰型の立体ディスプレイを用いた実験に成功しつつある。シェーダ・プログラミングを活用したLOD表示など、大規模点群を高速表示する技術の開発が進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
1. これまでの研究で「3次元計測で得られた点群を補間して局所的な陰関数曲面を生成し、各点に基準面からの距離に基づき色づけをする」という当初の計画にめどがついた。比較的単純な形状(例えば浮世絵の板木)では、この色づけによって凹凸の特徴が明瞭に可視化できている。本年度は、これをより複雑な形状に適用する実験をして手法を完成させる。 2. Martinらが提案した"linearity" という特徴量は、従来、主成分分析を用いて3次元点群の個々の点に特徴色を付与するために用いられていた。この linearity を透視可視化に固有の自由度である「不透明度」の調整に利用し、特徴領域を「特徴色」と「特徴不透明度」の両方で強調する手法を開発する。 3. 前年度の研究で祇園祭の大船鉾のCADデータと三条通の町並みのレーザ計測データを用いて、大船鉾巡行の際の町並みとの衝突シミュレーションを行い、衝突危険性が高い部分を強調可視化できた。本年度は、これを工場への機器の搬入などのプラントシミュレーションに適用する実験を行う。 4. 医用ボリュームデータを3次元点群化した上で、開発手法を用いて等値面の高曲率部などの特徴領域を強調する半透明可視化の実験を行う。さらに、得られる半透明画像を裸眼立体ディスプレイで表示し、奥行き感向上の実験を行う。 5. 南海トラフ地震の津波シミュレーションの出力データを3次元点群化した上で、 開発手法を用いて、塩分濃度が急速に変わる部分を強調可視化したボリュームレンダリングを実現する。また、ボリュームレンダリングに海の断面を重畳した融合可視化の効果を調べる。 6. 開発した手法を実装したソフトウェアを完成させる。さらに、これを、京都市内の3次元計測の業者にユーザとして使っていただく。とくに、京都市伏見区の藤森神社の3次元計測データに適用していただく。そのフィードバックを得て、ソフトウェアの完成度を高める。
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