研究課題/領域番号 |
16H03249
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
井上 茂 東京医科大学, 医学部, 教授 (00349466)
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研究分担者 |
岡 浩一朗 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (00318817)
福島 教照 東京医科大学, 医学部, 講師 (00408626)
原 丈貴 島根大学, 教育学部, 准教授 (40420723)
菊池 宏幸 東京医科大学, 医学部, 講師 (90783142)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 身体活動 / ヘルスプロモーション / ポピュレーションアプローチ / ソーシャルマーケティング / 地域介入研究 / クラスターランダム化試験 / dissemination research |
研究実績の概要 |
申請者らは先の科研費(平成25-27年度・基盤B・25282209)で、コミュニティ・ワイド・キャンペーンによる身体活動促進の効果を地域ランダム化試験で検証した。本研究はこの研究を発展させるもので、以下の2つの研究から成り立っている。【研究1】先の研究対象者を追跡し要介護・死亡をアウトカムとした効果、費用対効果を検討する。【研究2】新たな研究として、介入地区をさらに広域化(雲南市全域:人口約40,000人、面積553km2)し、より実践的な条件(一般的な市区町村が有する程度のリソースを活用した条件)のもとで地域介入の効果を検証する(拡散研究)。第二年度(平成29年度)は、 【研究1】については、地域介入5年後までの要介護・死亡データをデータベース化した。市内12地区の調査対象者4,559人のうち、252人が新たに要支援・要介護の認定を受け、このうち107人は要介護2以上であった。また、157人の死亡を確認した。さらに介入7年後までの要介護・要死亡情報のデータベース化を進めている。費用対効果については要介護認定の区分も含めた情報を整理した。今後、要介護2以上に絞った分析や費用対効果の分析が可能である。 【研究2】については、地域介入を本格化させ、2016年10月に実施したベースライン調査をデータベース化した。雲南市全域より無作為に抽出した40-79歳の男女7012人のうち、返信が得られた者は3939人(回答率56.2%、男性47.9%、年齢62.1±10.2歳)だった。主要評価項目(活動的な生活習慣:週150分以上の歩行習慣、あるいは毎日の柔軟運動、あるいは週2日以上のレジスタンス運動)を評価できたものは3895人であり、このうち、上記基準を満たす活動的な者は1873人(48.1%)だった。この数字をベースライン値として活動的な者の割合を増やすことを目標に地域介入を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究1】では先の介入研究(平成21年10月から開始したクラスターランダム化試験)開始から5年後までの要介護・死亡の情報をデータベース化できた。また、主要アウトカムである「活動的な生活習慣を持つ者の割合」については、5年間の介入効果を示す学術論文を出版できた(Kamada, Inoue et al. Int J Epidemiol, 2018)。要介護・死亡について現在、7年後までの情報の取得手続き中である。第三年度中には情報を取得して分析を行う方針である。また、費用対効果の検討は、研究班内で介入コスト算出方法について検討し、費用対効果分析を行う準備ができた。 【研究2】ではベースライン調査のデータベース化を達成した。地域介入は順調に進展している。2017年度は介入実施の核となる身体教育医学研究所うんなんと市内各地区の関係機関・組織とのネットワークを強化、促進した。昨年度実施したベースライン調査のデータクリーニングはおおよそ終了し、計画通り、分析できる体制が整った。
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今後の研究の推進方策 |
概ね計画通りに進行しており、平成30年度も当初の計画に沿って研究を実施する。 【研究1】先の地域介入研究(平成21年10月から平成26年10月)の長期的な効果を、要介護・死亡も踏めて分析する。最終的には7年後(平成28年10月)までのデータベースを完成して分析する。費用対効果の検討については、これまで実施してきた詳細なプロセス評価の記録をもとに、介入コストを算出する。アウトカムを行動変容(活動的な生活習慣に変容すること)として費用効果比、増分費用効果比を算出する。 【研究2】研究計画に沿って、介入を雲南市全域に展開する。介入は平成21年度から平成26年度に実施した地域クラスターランダム化試験と同様にソーシャルマーケッティングを活用したコミュニティ・ワイド・キャンペーンとする。本介入は、個人介入、小グループ介入ではなく(そのような介入も含めるが)、地域住民全体を対象とするもので、活動的な生活習慣者の割合を増加させることが目標である。具体的には「情報提供」「教育機会」「サポート環境」の3 要素で構成する。既に介入を始めているが、先の研究での経験をもとに、住民組織・自治体と協議を重ね、地域の特性、資源に応じた介入を継続する。10月には、全市展開2年後の追跡調査を実施して介入の短期的な効果を検証する。先の研究(研究1)において介入が住民の行動変容として効果を現すにはある程度の時間(3-5年程度)が必要なことを経験しているが、短期的な効果としては、介入への気づき、身体活動に関する知識などに変化が現れることが期待される。
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