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2017 年度 実績報告書

プロテアソームの発現機構の解明とアンチエイジングへの応用

研究課題

研究課題/領域番号 16H03265
研究機関同志社大学

研究代表者

小林 聡  同志社大学, 生命医科学部, 教授 (50292214)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードタンパク質分解 / プロテアソーム / アンチエイジング / 遺伝子発現
研究実績の概要

老化の原因の1つとして、タンパク質分解酵素プロテアソームの機能低下があげられる。プロテアソーム活性が低下すると、変性タンパク質が蓄積し細胞機能が破綻する。逆にプロテアソームを過剰発現させた線虫は、寿命が延長されることが知られている。したがってプロテアソーム発現を維持できれば老化予防(アンチエイジング)が可能になる。しかしながら、これまでプロテアソームの発現機構やその転写因子すら解明できていなかった。最近申請者らを初めとする複数のグループが、この問題を解明する基礎データとして、転写因子Nrf1がプロテアソームの誘導的発現を制御していることを見出した(Mol Cell (2010), Mol Cell (2010), Mol Cell Biol (2011))。つまりNrf1の活性を制御することで、加齢に応じたプロテアソーム活性の低下を抑制し、ひいてはアンチエイジングをもたらすことが強く期待される。本年度は、以下の点について解明することができた。
(1)タンパク質品質管理におけるNRF1の遺伝子発現ネットワークの解明
NRF1が制御するプロテアソームをはじめとする標的遺伝子を網羅的に解明するために、ChIP-seq解析とマイクロアレイ解析を行い、NRF1が直接転写誘導している遺伝子を複数同定することに成功した。
(2)関連因子NRF3によるタンパク質分解機構の発見
NRF3は20Sプロテアソームの遺伝子発現というよりも20SプロテアソームのアセンブリシャペロンUMP1遺伝子を誘導することで、20Sプロテアソームを活性化することを見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

(1)タンパク質品質管理におけるNRF1の遺伝子発現ネットワークの解明
NRF1が制御するプロテアソームをはじめとする標的遺伝子を網羅的に解明するために、ChIP-seq解析とマイクロアレイ解析を行った。ChIP-seq解析では、ヒト大腸ガン由来HCT116細胞とNRF1抗体によりNRF1が結合した領域を単離し次世代シークエンスにより遺伝子座を同定することに成功した。さらにマイクロアレイ解析ではプロテアソーム阻害剤によりNRF1を安定化させることで発現上昇した遺伝子群を同定した。これら両解析から抽出された遺伝子データを統合し、NRF1が直接転写誘導している遺伝子を複数同定することに成功した。これらNRF1標的遺伝子群の中には、プロテアソームのみならず、様々な生命現象に関わる遺伝子が含まれている。現在、各遺伝子の吟味とタンパク質品質管理ならびにアンチエイジングとの関連を精査中である。
(2)関連因子NRF3によるタンパク質分解機構の発見
NRF1が属するCNCファミリー転写因子群には酸化ストレス応答で有名なNRF2と申請者が世界に先駆けて発見したNRF3が存在する。すでにNRF2は酸化ストレス下でのプロテアソーム遺伝子の発現に関わることが知られているが、NRF3については不明なままであった。今回、NRF3もまたプロテアソーム遺伝子群の制御に関わる可能性を見出したが、NRF3は20Sプロテアソーム特異的であった。さらに精査したところ、NRF3は20Sプロテアソーム遺伝子というよりも20SプロテアソームのアセンブリシャペロンUMP1遺伝子を誘導することを見出した。この生理機能の意義をガン発症過程において見出しており、本研究の新たな展開を見せている。ガンは細胞増殖の亢進とともに、細胞死の抑制が鍵となり、これは正に細胞のアンチエイジングの活性化と捉えることが可能である。

今後の研究の推進方策

(1)タンパク質品質管理におけるNRF1の遺伝子発現ネットワークの解明  昨年度同定したNRF1標的遺伝子群を精査することで、NRF1の直接的な標的遺伝子を確定する。そして、それら遺伝子とプロテアソームによるタンパク質品質管理の亢進ならびにアンチエイジングにつながる生理メカニズムを解明する。
(2)NRF1過剰発現による細胞寿命の亢進  NRF1がアンチエイジングをもたらすプロテアソームを誘導することから、NRF1過剰発現が細胞老化を抑制すると考えられる。現在樹立中であるNRF1過剰発現細胞を完成させ、細胞老化という観点で精査する。
(3)NRF1関連因子NRF3の20Sプロテアソームを介したガン細胞における生理作用の解明  昨年度、本研究により新たな展開を示したNRF1関連因子NRF3による20Sプロテアソームによる新たなタンパク質分解機構の詳細について、ガン発症という過程において解明する。特に、20Sプロテアソームは26Sプロテアソームと異なり、ユビキチン鎖を認識する19S複合体をもたないため、ユビキチン非依存的なタンパク質分解になる。そこでNRF3により活性化した20Sプロテアソームによるタンパク質分解メカニズム、分解タンパク質を解明する。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2017 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件) 産業財産権 (2件)

  • [雑誌論文] Multiple regulatory mechanisms of the biological function of NRF3 (NFE2L3) control cancer cell proliferation.2017

    • 著者名/発表者名
      Chowdhury, AM. M. A., Katoh, H., Hatanaka, A., Iwanari, H., Nakamura, N., Hamakubo, T., Natsume, T., Waku, T., Kobayashi, A.
    • 雑誌名

      Sci. Rep.

      巻: 7 ページ: 12494

    • DOI

      10.1038/s41598-017-12675-y

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Denaturation of DNA in ternary mixed solution of water/hydrophilic/hydrophobic organic solvent.2017

    • 著者名/発表者名
      Ito Y. Tsukagoshi K, Kobayashi A.
    • 雑誌名

      J Anal Sci, Method Instrum.

      巻: 7 ページ: 40-46

    • DOI

      10.4236/jasmi.2017.72004

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] The cysteine-rich domain of TET2 binds preferentially to mono- and dimethylated histone H3K36.2017

    • 著者名/発表者名
      Yamagata K, and Kobayashi A.
    • 雑誌名

      J Biochem.

      巻: 161 ページ: 327-330

    • DOI

      10.1093/jb/mvx004.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Possible roles of the transcription factor Nrf1 (NFE2L1) in neural homeostasis by regulating the gene expression of deubiquitinating enzymes.2017

    • 著者名/発表者名
      Taniguchi, H., Okamuro, S., Kohji, M., Waku, T., Kubo, K., Hatanaka, A., Sun, Y., A M Chowdhury, AM A., Fukamizu, A., Kobayashi, A.
    • 雑誌名

      Biochem Biophys Res Commun.

      巻: 484 ページ: 176-183

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2017.01.038.

    • 査読あり
  • [学会発表] プロテアソームの誘導的発現と疾患2017

    • 著者名/発表者名
      小林 聡
    • 学会等名
      ConBio2017 ワークショップ「プロテオスタシス制御の新展開と疾患」
    • 招待講演
  • [学会発表] 構成的プロテアソーム活性の転写因子NRF1とNRF3による協調的制御の可能性2017

    • 著者名/発表者名
      片山 寛之、鎌田 七海、和久 剛、小林 聡
    • 学会等名
      ConBio2017
  • [学会発表] 転写因子NRF3(NFE2L3)は20Sプロテアソームの活性亢進を介して腫瘍増大に寄与する2017

    • 著者名/発表者名
      和久 剛、糀 美早紀、鎌田 七海、辰巳 千夏、畠中 惇至、小林 聡
    • 学会等名
      ConBio2017
  • [学会発表] 転写因子NRF3(NFE2L3)はTGF-β/SMADシグナルを制御する2017

    • 著者名/発表者名
      廣瀬 修平、和久 剛、小林 聡
    • 学会等名
      ConBio2017
  • [学会発表] 転写因子NRF3(NFE2L3)を過剰発現するヒト肺がん細胞H1299を用いたマウス移植解析2017

    • 著者名/発表者名
      糀 美早紀、和久 剛、小林 聡
    • 学会等名
      ConBio2017
  • [学会発表] HIV-1プロテアーゼ阻害剤による転写因子NRF3を標的とした新たな抗がん作用機構2017

    • 著者名/発表者名
      畠中惇至、行武拓哉、糀美早紀、和久 剛、小林 聡
    • 学会等名
      第22回日本病態プロテアーゼ学会学術集会
  • [学会発表] 転写因子NRF3は20プロテアソーム活性亢進を介してガン細胞の増殖を亢進する2017

    • 著者名/発表者名
      鎌田七海、糀美早紀、和久 剛、小林 聡
    • 学会等名
      第64回 日本生化学会近畿支部会
  • [学会発表] 転写因子NRF3はプロテアソーム発現亢進を介してp53依存的なガン抑制シグナルを阻害する2017

    • 著者名/発表者名
      和久 剛、小林 聡
    • 学会等名
      転写研究会・新学術領域「転写サイクル」共催 冬の若手ワークショップ2017
  • [備考] 同志社大学遺伝情報研究室ホームページ

    • URL

      https://akobayas.wixsite.com/genetic-code-lab

  • [備考] 同志社大学生命医科学部医生命システム学科オリジナルホームページ

    • URL

      http://medsystems.doshisha.ac.jp

  • [産業財産権] 抗HIV治療薬を利用した抗がん剤2017

    • 発明者名
      和久剛、小林聡、畠中惇至
    • 権利者名
      和久剛、小林聡、畠中惇至
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2017-087470
  • [産業財産権] 細胞抽出装置、細胞抽出プログラム及び細胞抽出方法2017

    • 発明者名
      廣安知之、和久剛、日和悟、小林聡、藤井光央、廣瀬修平
    • 権利者名
      廣安知之、和久剛、日和悟、小林聡、藤井光央、廣瀬修平
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2017-236063

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公開日: 2018-12-17  

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