研究課題/領域番号 |
16H03321
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研究機関 | 京都学園大学 |
研究代表者 |
鈴木 玲治 京都学園大学, バイオ環境学部, 准教授 (60378825)
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研究分担者 |
野間 直彦 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (80305557)
黒田 末寿 滋賀県立大学, 人間文化学部, 名誉教授 (80153419)
増田 和也 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 准教授 (90573733)
大石 高典 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 講師 (30528724)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 環境調和型農林水産 / 生態学 / 人類学 / 土壌学 / 地域活性化 |
研究実績の概要 |
本年度は滋賀県余呉町中河内の共有林の雑木林を伐開し、焼畑による山カブの栽培を行った。夏に雨が多かったこともあり、沢筋近くの山カブに軟腐病が発生し、焼畑地内に広範に広がったことから、例年に比べると山カブの収量は低下した。また、コナラの優占する放棄里山林から炭焼き用にコナラを伐出し、その跡地でコナラの枝葉や雑木を燃やして行う「有用樹伐出型」の焼畑のため、コナラの伐採・運搬を行った。火入れは平成29年度に行う予定である。 また、6年前にササ群落の伐開・火入れにより焼畑を行った休閑地では、休閑初期に萌芽再生したタニウツギが林冠を閉鎖して他の植物を被圧していたが、休閑6年目で先駆性のヌルデが高さでタニウツギを上回った。今後は、ヌルデやタラノキなどの先駆性の樹木が高木層を構成する林分になることが予想される。火入れ後6年が経過しても火入れ前に優占していたクマザサがほとんど現れないことから、焼畑によりササが駆除されることが示唆された。焼畑による夏の火入れはササ群落の林相転換には有効だが、山地の生物資源としてササを活用する場合は、ササ群落を火入れ対象地から外す必要がある。 また、近年は焼畑復活の動きが日本各地でみられ、焼畑を活かした農業再生・里山再生・地域活性化などの可能性が盛んにPRされているが、これらの焼畑地は地理的に離れていることもあり、地域間の繋がりは決して強くないのが現状である。今年度は、中部から西日本で焼畑に取り組む7地域(熊本県水上村、宮崎県椎葉村、高知県仁淀川町、 島根県奥出雲町、静岡県井川地区、福井県味見河内町、滋賀県余呉町)の焼畑実践者の交流・情報交換・議論を目的としたフォーラム(「第1回焼畑フォーラム」平成29年3月27日~28日)を宮崎県椎葉村で開催した。焼畑復活が一過性のブームではなく、日本の地域再生への大きな潮流となることを目指し、有意義な議論を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した計画に沿って、順調な調査研究活動を展開中である。特に、宮崎県椎葉村で開催した第1回焼畑フォーラムを通じ、日本各地の焼畑実践者間での密なネットワークが形成でき、今後の調査研究活動を円滑に推進する上でも非常に有益であった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、食・森・地域を有機的に繋ぐ生業として焼畑に着目し、中山間地域に眠る生態資源や人的資源を活かしながら、焼畑を核にした農業再生・里山再生・地域再生を目指すものである。 平成29年度は、これまで行ってきた滋賀県余呉町での農学的・生態学的調査に加え、日本各地で営まれる焼畑地で聞き取り調査、参与観察を行う予定である。これらの調査から、各々の焼畑運営の社会経済的な存続要因や成立過程、現状での利点や問題点、今後の課題等を抽出する。これらの結果を活かしながら、地域特性に適合した農・林循環モデル、焼畑運営モデルの組み合わせを検討し、日本の中山間地域の特性に応じた、焼畑を核にした生業モデルを構築することが、本研究活動の最終目的である。
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