研究課題/領域番号 |
16H03321
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研究機関 | 京都学園大学 |
研究代表者 |
鈴木 玲治 京都学園大学, バイオ環境学部, 准教授 (60378825)
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研究分担者 |
野間 直彦 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (80305557)
黒田 末寿 滋賀県立大学, 人間文化学部, 名誉教授 (80153419)
増田 和也 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 准教授 (90573733)
大石 高典 東京外国語大学, 現代アフリカ地域研究センター, 講師 (30528724)
島上 宗子 愛媛大学, 国際連携推進機構, 准教授 (90447988)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 環境調和型農林水産業 / 生態学 / 人類学 / 土壌学 / 地域活性化 |
研究実績の概要 |
一昨年度、昨年度に引き続き、今年度も滋賀県余呉町中河内の共有林の雑木林を伐開し、焼畑による山カブ栽培を行った。7月14日に伐採、8月4日に火入れ・播種を行い、10月下旬から11月上旬にかけて収穫した。今年度は、収穫直前に黒斑病とおもわれる症状が山カブに発生したものの生育に大きな影響はなく、山カブの収量は過去最高レベルであった。収穫した山カブの一部は、焼畑による在来作物の認知度向上と普及を目指し、滋賀の伝統野菜を紹介するイベントである「近江の伝統野菜×滋賀食材イチオシディナー」(2018年11月24日 於:東京都中央区 滋乃味)に出品し、好評を博した。 今年度は、余呉町の焼畑休閑地における有用植物の生育調査の一環として、地元で昔から山菜に利用されてきたワラビの生育調査を行った。休閑年数とワラビの生育状況には明確な関連は認められなかったが、火入れ直後からワラビの旺盛な回復が認められた焼畑地では、火入れ後3年が経過してもワラビの生育状況は良好であった。また、中河内在住で、かつて焼畑を営んでいたN氏(大正14年生・女性)に対する聞き取り調査を行った。N氏の焼畑は主に草地を伐採したもので、作付け4年(ソバ・カブ・ダイコン→アワ→アズキ→エゴマ)に対し、休閑年数は1-2年程度であり、当初の想定よりもはるかに短い休閑年数で焼畑を営んでいたことが分かった。また、地域間比較のため、山形県温海地区及び新潟県山北地区における焼畑林業に関する聞き取り調査と現地視察を行った。 また、日本各地で焼畑に関わる諸団体の交流・情報交換及び焼畑の今後の展望の議論を目的とした会合である第2回焼畑フォーラム(静岡市・静岡県後援、2019年3月16日開催)を静岡市で開催した。招聘者及び一般参加者を合わせ約130名の参加があり、焼畑の技術を活かした在来作物保全・里山再生・地域活性化などに関する活発な議論が行われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した計画に沿って、順調な調査研究活動を展開中である。特に、第1回及び第2回焼畑フォーラムを通じ、焼畑実践者間の密なネットワークが全国レベル(九州・四国・中国・近畿・東海・北陸・東北)で構築されており、これらのネットワークを活かした地域間交流・地域間比較がスムーズに行えている。滋賀県余呉町の焼畑における農学・生態学的調査と聞き取り調査に加え、他地域の焼畑における参与観察や聞き取り調査から、各々の地域の生態環境に応じた作物栽培や火入れのあり方、焼畑運営の社会経済的な存続要因や成立過程、現状での利点や問題点を整理し、地域特性に応じた焼畑の最適モデルの検討に向け、今後の課題を抽出している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、食・森・地域を有機的に繋ぐ生業として焼畑に着目し、中山間地域に眠る生態資源や人的資源を活かしながら、焼畑を核にした農業再生・里山再生・地域再生を目指すものである。今後も、これまでに行ってきた滋賀県余呉町での農学的・生態学的調査を継続すると共に、日本各地で営まれる焼畑地での聞き取り調査、参与観察に基づく地域間比較に力を入れる。2019年度は、山形県温海地区や新潟県山北地区で営まれているスギ植林地の皆伐跡地での焼畑(焼畑林業)を余呉町でも試験的に実施する。また、宮崎県椎葉村で営まれている焼畑輪作を参考に、余呉町でも2年目畑における雑穀栽培を試験的に実施し、詳細な地域間比較を行う予定である。
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