研究課題
戦争とジェンダーに関する諸問題を、「慰問」という行為に着目し検証することを本研究課題とする中で、以下の研究成果を得ることができた。第一に、慰問行為の日本への導入については欧米の女性たちによる社会活動が前提としてあり、戦争や災害時に日本社会への定着が認められた。そのことから、慰問活動が社会的危機への一つの対応方法として近代ジェンダー秩序の中に位置づけられたことが明らかになった。第二に、慰問行為は近代日本社会の中で時期に応じて変化するものの、女性や子どもを中心とした社会貢献行為として展開されていたことが明らかになった。慰問の形態、慰問すべき対象、慰問の意義なども多様化され、近代社会においてはそれが戦争に関わるものへと収斂されていった。本研究においては、その多様な文化に着目し、いくつかの側面を明示することができた。第三に、戦後日本社会においても慰問が実施され、特に戦犯を収容するスガモプリズンで慰問が行われてきたこと、およびその具体的内容について明らかにした。以上、大きく三点について論証してきたが、各論として婦人活動としての慰問や傷痍軍人への慰問、人形という慰問品、児童文学による啓蒙など、戦争を支持し支援するための社会のサブシステンスとして慰問が機能してきたことが明らかになった。法や社会制度が補填しきれない溝を、国民の主体的な物資と労力の提供により補い、戦う主体を支えるためのジェンダー・システムとして極めて重要であると結論付けることができた。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件) 図書 (3件)
『科学研究費成果報告書 基盤研究B 2016-2018年度 戦争と慰問文化-慰問の実践とシステムに関する文化史研究-』
巻: 1 ページ: 29-39
『世界』
巻: 917号 ページ: 200-210
『大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター年報』
巻: 16号 ページ: 26-333
『平成27年~29年度日本学術振興会科学研究費助成基盤研究(c)研究成果報告書 帝国解体と戦後秩序構築過程における大衆メディアのジェンダー・エスニシティ表象分析』
巻: 1 ページ: 21-26
巻: 1 ページ: 85-98
Yasuko Claremont ed, Civil Society and Postwar Pacific Basin Reconciliation: Wounds, Scars, and Healing, London & New York: Routledge
巻: 1 ページ: 43-58
『季刊戦争責任研究』
巻: 91号 ページ: 14-30
『未完成―企図/作品/芸術家―』千葉大学大学院人文公共学府研究プロジェクト報告書
巻: 333号 ページ: 151-163
『日本児童文学』
巻: 64(5) ページ: 58-61