研究課題/領域番号 |
16H03575
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
仙石 学 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 教授 (30289508)
|
研究分担者 |
松本 充豊 京都女子大学, 現代社会学部, 教授 (00335415)
馬場 香織 北海道大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (10725477)
磯崎 典世 学習院大学, 法学部, 教授 (30272470)
小森 宏美 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (50353454)
村上 勇介 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 准教授 (70290921)
中田 瑞穂 明治学院大学, 国際学部, 教授 (70386506)
油本 真理 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 助教 (10757181)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 政治経済学 / ネオリベラリズム / 地域間比較 / 新興民主主義国 |
研究実績の概要 |
2016年度は研究の1年目として、主要国におけるネオリベラル的な政策の現状について把握することを試みた。 まずこの科研による最初の成果として、論文集『脱新自由主義の時代?―新しい政治経済秩序の模索』を京都大学学術出版会より刊行した。この論文集は東欧、南欧、およびラテンアメリカにおいて民主化を進めた国におけるネオリベラル的な政策のあり方、およびその現状を分析したもので、その成果としてネオリベラル全盛期を過ぎた現状においては、引き続き教条的にネオリベラル的な政策を進めている国、明確な反ネオリベラル路線を鮮明にしている国、およびネオリベラル的な政策を実施しつつも経済状況や国民の支持に対応して柔軟な路線を選択している国があることが明らかにされた。また同時に、ネオリベラル的な経済政策を推進する国ではリベラルな民主主義が尊重されるのに対して、反ネオリベラル的な政策が実施された国では「多数派の支持」を背景に憲法が非民主的な形に修正されたり、法治主義を軽視して独断な政治が進められる場合があることが明らかにされた。この民主主義とネオリベラル的な政策の関連については、今後「非民主主義国」の事例をも含めて、さらに検討を進める予定である。 また2016年度には、本科研の研究会を10月に京都で、本科研と科研費「ユーラシア地域大国(ロシア,中国,インド)の発展モデルの比較」との合同研究会を2017年1月に福岡で開催した。10月の研究会ではブラジルの家族手当と韓国の年金に関する報告が行われ、前者ではネオリベラル的な政策を是正するための家族手当の効果、後者では年金運用における市場運用の比率の拡大に関する議論が提起された。1月の合同研究会では東欧の他にロシア、インド、中国をテーマとした研究報告が行われ、ロシアや中国における経済への国家介入と東欧や中国でのネオリベラル化の進展という対比が検討された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本科研は1年目の目標として、各国のネオリベラル的な政策の実施状況の検討と、ネオリベラル的な政策を分析するための指標の設定ということをあげていた。この2点については、当初の計画以上に達成されたと考えられる。 指標の設定については、まだ厳密なものではないとはいえ、研究成果に示したように現在では経済政策に3つの方向性があること、およびネオリベラル的な政策の実施は政治の形と密接に連関していることを明らかにした。また現況の分析については、事前の準備があったとはいえ、1年目にして研究成果を論文集として単行本の形で公刊することができ、またその過程を通して民主主義とネオリベラル的な政策の連関という、新たな分析のための視角を得ることもできた。加えて研究活動としても、単に新興民主主義国を比較するというだけではなく、グローバリズムにある程度は「抗する」力のある地域大国の事例とも比較することで、リベラル的な政策と政治体制の関連についてより深く検討する契機を得ることができた。研究分担者および連携研究者の業績も相応にあり、本科研については当初の計画以上に進展していると判断することができると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度の研究を通して、ネオリベラル的な政策の実施は民主主義のあり方と連関していること、特に近年のポピュリズム的な動きが反ネオリベラル的な主張・政策とある程度連動していることが明らかにされたことから、今年度は現在状況の現況分析に加えて、政治のあり方と政策の関連について、比較分析を進めていくこととしたい。そのために今年度からは、科研の構成員による現状調査と内部での研究会を通した比較分析に加えて、今年度からは科研費「ユーラシア地域大国(ロシア,中国,インド)の発展モデルの比較」との連携も促進させ、多元的な形で比較を行うことを進めていく予定である。
|