研究課題/領域番号 |
16H03637
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
亀田 啓悟 関西学院大学, 総合政策学部, 教授 (80286608)
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研究分担者 |
宮崎 智視 神戸大学, 経済学研究科, 准教授 (20410673)
国枝 繁樹 中央大学, 法学部, 教授 (40304000)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 国債金利・長期金利 / 財政赤字・公的債務 / テキスト解析 / 高頻度データ / ホームバイアス / 希少性プレミアム / 自然災害リスク / DSGE |
研究実績の概要 |
わが国の公的債務-国債金利間の逆説的な状況は、多くの研究者の関心を呼び数々の研究がなされてきた。しかし、従来の国債金利の誘導形を推計する手法では、説明変数である財政データの頻度が低く金利の変化を十分に説明できない。この状況に対し、近年、ファイナンス理論を応用し、高頻度データや新聞などのテキスト情報を活用した研究が始まっている。本研究ではこうした手法上の発展を活用しながら我が国の財政と国債金利の関係を再検討する。また、近年、低金利の発生メカニズムに関する研究も進んでおり、いわゆるホームバイアスの存在、自然災害等の巨大リスクの影響、担保価値に資する等の国債保有の特別なメリット(希少性プレミアム)等の要因が指摘されている。本研究ではこの発生メカニズムも合わせて検討することにしたい。 本研究は、具体的には以下の4課題で構成される。(課題1)日本の財政悪化が国債金利を高めるかをテキスト分析を応用して分析、(課題2)ホームバイアスの有無を日英の文字情報に対する反応の差異から分析、(課題3):自然災害等の巨大リスクの影響をBarro(2009)に基づき分析、(課題4):DSGEで希少性プレミアムと国債金利の関係を分析 当年度は、(課題1)国際財政学会でacceptされ報告を行った、(課題2)1年あたり約400万件の記事のRでの読み込みが完了した、(課題3)Rare disasterモデルでネガティブなショックの原因となる大災害(自然災害、戦争、疫病等)のリスクをヘッジするためのGDP連動債の導入の理論的・政策的課題を分析中、(課題4)1次推計の実施、まで実施することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は主に課題1,2,4について研究を進めた。それぞれの進捗状況は以下の通りである。(課題1)おおむね順調に作業が進み、新聞記事のテキスト分析から日次の財政不安指数を構築することに成功した。ただし、この指数と長期金利との因果関係を分析するにあたり、データの非定常性の扱い方に調整が必要であることが明らかになった。(課題2)1年あたり約400万件の記事のRでの読み込みが完了した。この結果、当初予想より日英両方でリリースされた記事数が少なく、分析手法を再検討する必要があることが明らかになった、(課題4)ベースとする予定だったDSGEモデルをDynare上で再現し、希少性プレミアムの導入を試みた。しかし、モデルの特性上、希少性プレミアムがほぼ中立的にしか作用しない想定となっており、モデルのチューニングが必要となることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
課題1については、時系列分析に関する外部の専門家の意見を求め、データの非定常性の問題を解消し、早期の投稿を目指したい。課題2については当初予想より日英両方でリリースされた記事数が少なかったことに対応して、(1)記事配信の言語ギャップの影響を見るターゲットとして国債金利だけでなく日経平均先物も加える、(2)時系列分析だけでなくケーススタディも加える、といった調整を施したい。課題3については、物価連動債の理論的考察を重ね草稿の完成を目指す。課題4については、DSGEモデルの調整を急ぎたい。ただし、これらの問題点は、いずれも想定の範囲内に納まっており、次年度以降のスケジュール調整で対応する予定である。
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