研究課題/領域番号 |
16H03651
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
谷口 勇仁 北海道大学, 経済学研究院, 教授 (60313970)
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研究分担者 |
小室 達章 金城学院大学, 国際情報学部, 教授 (00335001)
小橋 勉 同志社大学, ビジネス研究科, 准教授 (20324444) [辞退]
藤川 なつこ 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (30527651)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 組織事故 / 形骸化 / リスクマネジメント / 安全文化 / 規則違反行動 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,組織事故防止のマネジメントについて,詳細な定性的調査に基づき,実証的に解明することである.その際,「規則の形骸化(規則が制定当初の機能を失っている状態)」に注目し,その現象を引き起こす組織の特徴を探索することにより,組織事故防止のマネジメントの提言を試みる.本研究は4ヶ年計画で実施され,第1年度にあたる平成28年度の研究実績の概要は以下の2点である. 第1に,規則の形骸化の定義と現象の検討である.本研究では,規則の形骸化を「法令および業界・社内の制度・規定が制定当初に想定していた機能を失うこと」と定義した.次に,「規則の形骸化」という現象について検討を行なった.具体的には,規則が形骸化している状態を,(1)規則を形式的に遵守しているため制定当初に想定されていた機能が失われている状態(規則の形式的な遵守),(2)現場や当事者の判断によって,暗黙に規則を遵守していないため,制定当初に想定された機能が失われている状態(規則の暗黙的な不遵守)の2つに分類した. 第2に,規則の形骸化という現象の発生原因について検討を行なった.具体的には,不正のトライアングル理論を規則の形骸化という現象に適用し,分析を行った.分析の結果,(1)認知された圧力は,全ての規則が内包しており,規則の形骸化の動機として位置づけられること,(2)認知された機会は,規則の形骸化の2類型である形式的な遵守と暗黙的な不遵守の選択に影響する要因として位置づけられること,(3)合理化は,規則が形骸化するか否かの決定要因として位置づけることができることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
規則の形骸化という現象を分析するためには,規則の形式的な遵守のみならず,規則の暗黙的な非遵守を検討する必要がある.今年度の検討により,規則の暗黙的な非遵守は規則違反行動として解釈できることが判明した.そのため,申請時に想定していた分析枠組を変更する必要が生じた.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,規則が形骸化している状態を,(1)規則を形式的に遵守しているため制定当初に想定されていた機能が失われている状態(規則の形式的な遵守),(2)現場や当事者の判断によって,暗黙に規則を遵守していないため,制定当初に想定された機能が失われている状態(規則の暗黙的な不遵守)の2つに分類した.後者の状態は,欧米においては,規則違反行動(rule-breaking behavior)として議論されている.そのため,規則違反行動に関連する先行研究も考慮し,分析枠組を再構築し,規則違反行動を引き起こす組織要因に関する作業仮説を導出する予定である.
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