研究課題/領域番号 |
16H03709
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研究機関 | 国立社会保障・人口問題研究所 |
研究代表者 |
釜野 さおり 国立社会保障・人口問題研究所, 人口動向研究部, 第2室長 (20270415)
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研究分担者 |
千年 よしみ 国立社会保障・人口問題研究所, 国際関係部, 第1室長 (00344242)
小山 泰代 国立社会保障・人口問題研究所, 人口構造研究部, 第3室長 (70415826)
布施 香奈 国立社会保障・人口問題研究所, 情報調査分析部, 研究員 (10713480)
岩本 健良 金沢大学, 人間科学系, 准教授 (50211066)
藤井 ひろみ 神戸市看護大学, 看護学部, 准教授 (50453147)
石田 仁 明治学院大学, 社会学部, 研究員 (40601810)
山内 昌和 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 准教授 (90415828)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 家族研究 / クィア・スタディーズ / レズビアン / ゲイ / トランスジェンダー / LGBT人口 / SOGI |
研究実績の概要 |
性的指向におけるマイノリティとされている、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルと、性自認のあり方におけるマイノリティとされているトランスジェンダーが、「LGBT」と括られて取り上げられることが増えている今、性的指向と性自認のあり方に関して、学術的な見地から信頼性のある情報の発信が求められている。本研究では従来の人口学と性的マイノリティの研究との融合を図り、人口学的視点から性的指向と性自認のあり方(以下、SOGI)の研究基盤を築くことを目指す。この目標に向けて、 (1)日本の人口学でSOGIに注目する意義とその方向性を探り、(2)SOGIを取り巻く社会的状況の重要な要素である「家族」の実証研究を進め、(3)日本の文脈でSOGI別の人口を社会調査で捉える方法論の検討を行い、(4) SOGIによる生活実態の統計比較分析を可能とする調査を検討する。 平成29年度は(1)社会調査で性的指向と性自認のあり方をとらえる方法についての文献を精読し、グループ・ディスカッション、メールでのアンケート、ヒアリングを通じて項目案を検討した。調査主体や手法等の違いが回答の有無に与える影響も検討した。(2) 渋谷区のパートナーシップ証明書の取得者等を対象に聞き取り調査を行い、同性カップルの関係性と制度のあり方を検討した。(3)日本家族社会学会の全国家族調査(NFRJ18)のレビュー班に参加し、性的指向を問う項目、同性カップルを特定する調査項目、SOGIに関する意識をたずねる項目を提案した。(4)日本において性的指向別、性自認のあり方別の人口割合を推定し、経済状況や健康状態等、生活状況全般とSOGIとの関連性の分析を可能とするモデル調査票を設計し、協力依頼状やFAQ等の書類を作成した。(5)無作為抽出法によってモデル調査票を用いて行う調査の協力自治体となる大阪市との交渉を進め、実施に向けた段取りを整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定では、日本においてSOGI項目を含めた生活実態調査を全国レベルおよび自治レベルで実施する可能性をさぐり、そのためのモデル調査票を作成することを目指していたが、大阪市の協力を得ることができ、また予算面でもさまざまな工夫をして、実際に調査を実施できる見込みが出てきたため、当初の計画以上に進展している、と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
人口学領域に性的指向・性自認の軸を導入し、統計分析を行う研究基盤を作るため、以下の課題に取り組む:①諸外国における研究・議論の整理、②日本の公的データにおける同性カップルの特定の可能性の検討、③既存の調査に性的指向・性自認を含む設計の検討、④家族の現状と変容の量的・質的分析、⑤SOGIを属性のひとつとして捉える社会調査の企画。⑤を進めるにあたり、SOGIを捉える項目と調査手法の検討、試験的調査の実施、調査プロトコルの作成を予定している。 平成30年度は、今年度設計した生活状況とSOGIとの関連性を調べるためのモデル調査票を用いて、大阪市において実査を行う。昨年度実施した、SOGIを捉える調査項目に関しての試験的調査の結果をまとめ、公表する。また、先行研究のレビュー(SOGIに関する量的研究)と文献データベースの作成、日本の公的調査のサーベイ(性自認や同性カップル世帯を捉えることに関しての調査担当部署へのヒアリング)と集計(国勢調査、国民生活基礎調査、社会保障・人口問題基本調査、その他の調査の二次利用による)を継続的に進めていく。
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