研究課題/領域番号 |
16H03716
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
岡本 多喜子 明治学院大学, 社会学部, 教授 (20142648)
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研究分担者 |
中村 律子 法政大学, 現代福祉学部, 教授 (00172461)
鳥羽 美香 文京学院大学, 人間学部, 教授 (10406556)
柴崎 祐美 立教大学, コミュニティ福祉学部, 助教 (10721706)
西田 恵子 常磐大学, コミュニティ振興学部, 教授 (50464706)
横山 博子 つくば国際大学, 産業社会学部, 教授 (90220574)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 養老院史 / 高齢者処遇(ケア) / 養老院実践記録 / 浴風会の個人記録 / 戦前期の社会事業実践 |
研究実績の概要 |
戦前期に設立された養老院の処遇(ケア)の状況を、第1次資料を収集、整理、分析するなかで明らかにし、今日の高齢者ケアとの連続性と非連続性について検討することを、本研究の目的としている。 今年度は、讃岐養老院・阿波養老院、および宮崎救護院での第1次資料の収集を開始した。また、九州地区及び宮城県、香川県の県立図書館・公文書館などで保存されている養老院関係資料の収集、国会図書館、東京都公文書館での資料収集を実施した。しかし養老院についての資料は少なく、各県における慈善事業史、社会事業史、社会福祉史において、多くは高齢者に関する記述が登場するのは敗戦後であった。その中で、関東大震災及び戦災で資料のほとんどを消失した東京養老院の要覧が残っていることが明らかになるなどの成果が見られた。 さらに浴風園での入所者記録を敗戦時まで取集することができた。これにより敗戦直後の東京都内での養老院の状況を知ることが可能となった。敗戦直後は引揚者の保護が中心となっており、高齢者に特化することが難しかったこと、陸軍に接収されていたために施設自体の傷みがひどく、多くの入所者を迎え入れることが困難であったことが分かった。この状況は、小樽育児院での敗戦直後の状況と共通する側面と、多様な地域からの引揚者および戦災被害者への対応を行った浴風会と、北方領土からの引揚者を中心とした小樽育児院という地域的な差による違いが表れてもいた。今後も他の地区の養老院の記録を収集することで、地域特性を明らかにすることが可能と考えられる。 地域特性という側面では、入所者の多くが浴風園内で死亡していた東京の養老院と、家族・親族に引き取られることが比較的多くみられた地方の養老院(特に讃岐養老院)との違いも明になった。また養老院がなかった宮崎では、救護施設が養老院の役割とはたしていたことも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では北海道と九州にある歴史の古い施設を中心として、養老院時代の第1次資料を収集するとしていた。しかし九州及び北海道での個別施設での資料収集が、先方との連絡調整が難航し、昨年度は収集することが難しくなった。そのため、施設の資料収集は四国にある2施設(讃岐養老院・阿波養老院)で実施することになった。しかし国立国会図書会・県立図書館・公文書館での資料収集は当初計画以上に進めることができ、また成果もあがった。具体的には東京養老院の戦前期の要覧を発見することができた等である。 また養老院が設立されることのなった宮崎県においては、宮崎救護院が養老院的な役割を担っていることが、その資料を収集する中で明らかにすることができた。これまで救護院については全国養老事業協会が1932年に実施した養老事業調査に記載されている施設を中心に検討してきたが、今後は各地区での歴史のある救護関連施設についても検討する必要が明らかにされた。 戦前期におけるモデル的養老院であった浴風会での個人記録の収集も順調に進み、敗戦時までの記録を整理することができた。その結果、これまで収集していた他の地区の養老院の状況との比較が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
各都道府県の公立図書館・公文書館での資料収集を継続して行い、日本全国を網羅していく予定である。さらに第1次資料の存在が明らかになっている養老院時代からの歴史のある施設を訪問し、資料のコピーおよび撮影を実施していく。2017年度は九州・四国・中国・山陰・東北・北海道の施設の資料を収集し、2018年度、2019年度で他の地区を網羅していく予定である。 さらに収集した資料の整理・分析を行い、地域特性の検討をおこなう。その際のひとつの指標として、寄付を中心として検討していく。救護法実施以前においては、多くの社会事業施設は寄付により運営を行っていた。養老院も例外ではなく、地域による寄付の実態を検討していく。さらに養老院で働く職員の背景、職員研修の内容についても検討を行い、高齢者処遇(ケア)をより良いものとしていく努力についても検討していくこととした。具体的には、全国利養老事業協会の研修事業の実態、それらを受けた職員と施設への影響などを検討していく。 また養老院の設立の背景に宗教(主にキリスト教と仏教)がどのように関係していたかも検討していく。キリスト教の布教活動の一環として、またキリスト教信者により設立された養老院と、地域の有力な寺や開祖周年などの記念行事として開設される養老院も見られる。また養老院や救護施設の開設と天皇の下賜金の役割についても、検討していく予定である。
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