研究課題/領域番号 |
16H03947
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
隠居 良行 九州大学, 数理学研究院, 教授 (80243913)
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研究分担者 |
水町 徹 広島大学, 理学研究科, 教授 (60315827)
川島 秀一 九州大学, 数理学研究院, 教授 (70144631)
前川 泰則 京都大学, 理学研究科, 准教授 (70507954)
小川 知之 明治大学, 総合数理学部, 専任教授 (80211811)
中村 徹 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (90432898)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 圧縮性Navier-Stokes方程式 / 周期パターン / スペクトル |
研究実績の概要 |
1. 2次元層状領域における圧縮性Navier-Stokes方程式のPoiseuille流の安定性を考察した.これまでの研究において,マッハ数がある程度大きければ,レイノルズ数がある臨界値を超えるとPoiseuille流は不安定となることを証明し,Poiseuille流の不安定化に伴って時空周期的進行波解の分岐が起こることを線形化作用素のスペクトルに対するある仮定のもとで証明していた.今年度の研究において,線形化作用のスペクトルがその仮定を満たすことを強く示唆する論拠および数値計算結果を与えた. 2. 人工圧縮系および非圧縮Navier-Stokes方程式の定常解のまわりの線形化作用素のスペクトルの関係を調べた.人工圧縮系は双曲-放物連立系に分類される方程式系であり,非圧縮Navier-Stokes方程式の定常解の集合は同一の定常解の集合をもつ.人工的マッハ数ゼロの極限で非圧縮Navier-Stokes方程式が得られるが,この極限は特異極限となっている.これまでの研究では,非圧縮系の線形化作用素のスペクトルが左半平面にあるとき,定常解の安定性を変分的条件で判定する十分条件を与えたが,今年度はこの変分的条件において試験関数として速度場のポテンシャル流部分のみを考えればよいという条件に改良した.この改良により速度場が必ずしも小さくない定常解である回転流体層に生じるテイラー渦を応用例として考えることが可能となり,人工圧縮系を用いて層流(クウェット流)からの分岐周期的渦パターンを数値計算により得ることができることがわかった. 3. 上述の人工圧縮系に対する解析手法を圧縮性流体方程式に対して拡張し,マッハ数が小さい場合に圧縮性クウェット流のまわりの線形化作用素のスペクトル解析を行うことができた.また同手法にもとづき,圧縮性熱対流の熱伝導状態のまわりのスペクトル解析を完成することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Poiseuille流の不安定化に伴って時空周期的進行波解の分岐が起こるときの分岐点近傍における線形化作用素の原点近傍の固有値の数値計算を行い,スペクトル構造の詳細を調べることができた.人工圧縮系の定常解のまわりの線形化作用素のスペクトルが,人口マッハ数が小さければ,非圧縮系の定常解のまわりの線形化作用素のスペクトルの摂動からなる部分と,圧縮性特有の性質に起因する部分とに分解されることを示すことができた.さらにこの方法を拡張してマッハ数が小さい場合に圧縮性テイラー渦や空間周期熱対流パターンの分岐点近傍における基本流まわりのスペクトルを解析する手法を開発することができた.このようにパターンダイナミクスの解析に有効な手法開発の第一歩を踏み出すことができた.
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今後の研究の推進方策 |
人工圧縮系の定常解のまわりの線形化作用素のスペクトル圧縮性特有の性質に起因する部分の詳細な解析を行う.その解析にもとづいて,人工圧縮系の定常分岐パターンのまわりの解のダイナミクスの詳細な解析を試みる. マッハ数が小さい場合に圧縮性テイラー渦や空間周期熱対流パターンの分岐点近傍における基本流まわりのスペクトルを解析する手法を分岐パターンのまわりの線形化作用素のスペクトルを解析する手法へと拡張する.
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