研究実績の概要 |
ポリジメチルシロキサン(PDMS)製マイクロ流路をPDMSの自己吸着性のみを利用してガラス基板上に可逆的に密着させ作製したハイブリッドマイクロ流体チップを用いることによって、油中水滴を自律的に生成させることに成功した。調製した液滴内でPCR増幅を行った後、これらの液滴の蛍光イメージングを実行した。蛍光画像内の1,000個以上の液滴サンプルの蛍光強度を測定し、蛍光強度別の液滴個数を示したヒストグラムを作成した。一液滴中の平均分子数(λ)が0.1, 0.2, 0.3となるようにサンプル調製した場合、ブランク液滴と有意な蛍光強度の差を示した液滴の割合はそれぞれ、9.4, 19.7, 24.4%であった。これらの値は、ポアソン分布の式より予想される値(9.5, 18.1, 25.9%)と良好な一致を示した。λの値を0.3以下とした場合、液滴内に二分子以上のDNAが封入される確率は無視できるため、蛍光した液滴内での変異型DNA増幅は、ほぼ全て一分子から開始されたとみなすことができる。これらの結果より、液滴内における一分子からのPCR増幅、すなわちddPCRの成功が確認された。以上の研究成果は、下記の専門誌に掲載され、当該号の表紙に選定された。
“A Poly(dimethylsiloxane) Microfluidic Sheet Reversibly Adhered on a Glass Plate for Creation of Emulsion Droplets for Droplet Digital PCR”, Yuta Nakashoji, Hironari Tanaka, Kazuhiko Tsukagoshi, and Masahiko Hashimoto, Electrophoresis, 38, 296-304 (2017).
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