研究実績の概要 |
平成28年度に達成目標としていた液滴生成速度の向上が十分には達成されていなかったため、平成29年度も引き続き同目標の実現に取り組んだ。具体的には、ポリジメチルシロキサン(PDMS)製のシートに多数のマイクロピラーをフォトリソグラフィー技術を用いて作製し、これを脱気した後、マイクロ流体チップに装着した。前記PDMSシートはマイクロピラー構造により大きな比表面積を有するため、高い吸引力を備えた真空アクチュエータとして機能し、油相および水相の送液速度が大幅に増大した。これにより液滴の最大生成速度は約500滴/秒に達し、従来よりも2桁高速な液滴調製を実現することができた。 平成29年度は、上記の検討とは別に、ダイアフラム式ピエゾマイクロポンプを用いたマイクロ流体制御システムを新規に開発した。本システムの基本性能を評価したところ、ポンプ制御入力電圧をオンにした瞬間から1秒以内に定常的な液滴生成が得られるという優れた特性を有することが見出された。また、液滴生成速度は、約1000滴/秒にも達することを確認した。さらに、平成29年度に目標としていた液滴の定点スクリーニングに本システムが適用可能であることを実証した。この研究成果は、下記学術誌に掲載された。
‘A compact and facile microfluidic droplet creation device using a piezoelectric diaphragm micropump for droplet digital PCR platforms’, Naoaki Okura, Yuta Nakashoji, Toshihiro Koshirogane, Masaki Kondo, Yugo Tanaka, Kohei Inoue, and Masahiko Hashimoto, Electrophoresis, 38, 2666-2672 (2017).
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