研究課題
高エネルギー陽子照射に対する粒子・重イオン輸送計算コードPHITSの原子はじき出し損傷モデルを検証するため、はじき出し断面積と関連する照射欠陥に伴う極低温の金属の電気抵抗増加をμΩオーダーで精密に測定する必要がある。前年度までに、10 K以下に冷却可能な照射装置を開発し、大阪大学核物理研究センター(RCNP)のサイクロトロン施設において200 MeV陽子照射に対するアルミニウム及び銅の電気抵抗増加を測定した。本年度は開発した冷却装置を用いて、389 MeV陽子照射に対するタングステンの電気抵抗増加を測定した。その結果、強度10 nAの陽子に対し、0.136mΩのタングステンの電気抵抗増加を測定できた。従来のはじき出し数導出モデル(NRTモデル)によるPHITSの計算値は、電気抵抗増加から導出したはじき出し断面積を約3倍過大評価したが、2018年に公開された最新の金属の非熱的再結合補正(arcモデル)を組み込んだPHITSの計算値は実験値を良く再現した。本傾向は、これまでの本科研費研究で得たアルミニウム及び銅の実験結果と同じであった。照射後、サンプルアセンブリに装着した電気ヒーターを用いて、100 K以下のアニールによるタングステンの電気抵抗の変化から欠陥回復データを測定した。その結果、60 Kにおいて約20%の欠陥が回復すること、回復の傾向は原子炉中性子照射による過去の実験値と同じであることがわかった。本成果をまとめて、Journal of Nuclear Materialsに論文投稿を行い、受理された。また、大強度及び高輝度ハドロンビームに関する国際ワークショップ(HB2018)、加速器、ターゲット及び照射施設における放射線遮蔽の国際ワークショップ(SATIF-14)、及び核破砕材料技術の国際ワークショップ(IWSMT-14)において発表を行い、成果を広く周知した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
Journal of Nuclear Materials
巻: 508 ページ: 195~202
10.1016/j.jnucmat.2018.05.038
Proceedings of the 61st ICFA Advanced Beam Dynamics Workshop on High-Intensity and High-Brightness Hadron Beams
巻: - ページ: 116~121
https://doi.org/10.18429/JACoW-HB2018-TUP2WE03