研究課題
高次機能発現や各種精神疾患との深い関連が指摘されている皮質GABA細胞に注目し、大脳新皮質の基本構築を明らかにする。シナプス結合部位の違いは、神経細胞の活動性に多大な影響を与えることから、単一シナプスレベルで回路構造を解析することが、大脳新皮質の動作原理解明に必須である。また、理論解析を通じ、シナプス結合部位がネットワークの動作特性に与える影響を検証する。さらに、透明化技術の実践的応用開発も進め、次世代の形態解析法創成にも努める。平成29年度は以下の課題に取り組んだ。(1) 以前の研究にて、各種GABA細胞からPV細胞への入力様式をS1にて検討した。VIP細胞からの入力は細胞体を、PV・SOM細胞からの入力は樹状突起を好むことを明らかにした(Hioki et al., 2013; Hioki 2015)。すなわち、PV細胞は部位特異的なシナプス入力を受けていることを明らかにした。M1でも同様の解析を進めたところ、皮質興奮性入力(VGluT1)・視床興奮性入力(VGluT2)・皮質抑制性入力(VGAT)入力様式についてはS1と同じ結果が得られ、領野を超えた一般原則だと考えられる。一方、各種GABA細胞からの入力様式を解析したところ、細胞体でも樹状突起でもPV発現細胞からの入力が多数を占め、S1のような部位指向性は認められなかった。すなわち、細胞種レベルで結合関係を眺めると、皮質構造は領野間で不均一であり、処理すべき情報に応じて結合様式が最適化されていると考えられる。(2) 取得したパラメタをもとに、S1におけるPV発現細胞の発火特性を検討した。抑制性シナプス入力部位によって、同期特性が大きく変わることを見出している。(3) スライス標本を透明化するプロトコールの開発を進め、大幅な時間の短縮に成功している。また、電子顕微鏡観察に適した固定法・包埋法の検討も進めた。
2: おおむね順調に進展している
特に大きな問題も生じず、順調に進んでいる。
『構造無き機能は無い』という旗標を掲げ、大脳新皮質が高次機能を実現する仕組みの謎に、形態学的視点から挑む。高次機能発現や各種精神疾患との深い関連が指摘されている皮質GABA細胞に注目し、大脳新皮質の基本構築を明らかにする。近年、GABA細胞同士の結合解析が盛んに行われているが、どれも空間解像度が細胞体レベルに限定され、シナプス入力部位に関する解析は大きく後れを取っている。シナプス結合部位の違いは、神経細胞の活動性に多大な影響を与えることから、単一シナプスレベルで回路構造を解析することが、大脳新皮質の動作原理解明に必須である。また、理論解析を通じ、シナプス結合部位がネットワークの動作特性に与える影響を検証する。さらに、透明化技術の実践的応用開発も進め、次世代の形態解析法創成にも努める。(1) PV発現細胞に対する部位特異的シナプス結合について、生理学的もしくは分子生物学的見地から検討を進める。また、S1の第4-6層に分布するVIP発現細胞、そしてSOM発現細胞に対する各種シナプス様式の解析を進めていく。(2) 2つのPV細胞を相互に結合させ(2体対称結合系)、同期パターンの解析を行ってきた。2体対称結合系を大規模ネットワークモデルへと拡張可能かを検証する。(3) 光顕と電顕の対応(LM-EM correlation)を効率的に行う技術を確立していく。
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すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
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