研究課題/領域番号 |
16H04663
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
日置 寛之 順天堂大学, 医学部, 准教授 (00402850)
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研究分担者 |
田中 琢真 滋賀大学, データサイエンス学部, 准教授 (40526224)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 神経回路 / 抑制性神経細胞 / 遺伝子工学 / 透明化 / シナプス結合則 |
研究実績の概要 |
高次機能発現や各種精神疾患との深い関連が指摘されている皮質GABA細胞に注目し、大脳新皮質の基本構築を明らかにする。シナプス結合部位の違いは、神経細胞の活動性に多大な影響を与えることから、単一シナプスレベルで回路構造を解析することが、大脳新皮質の動作原理解明に必須である。また、理論解析を通じ、シナプス結合部位がネットワークの動作特性に与える影響を検証する。さらに、透明化技術の実践的応用開発も進め、次世代の形態解析法創成にも努める。平成30年度は以下の課題に取り組んだ。 (1) M1において、各種GABA細胞からPV細胞への入力様式を検討した。皮質興奮性入力(VGluT1)・視床興奮性入力(VGluT2)・皮質抑制性入力(VGAT)入力様式についてはS1と同じ結果が得られ、領野を超えた一般原則だと考えられる。一方、各種GABA細胞からの入力様式を解析したところ、細胞体でも樹状突起でもPV発現細胞からの入力が多数を占め、S1のような部位指向性(Hioki et al., 2013; Hioki 2015)は認められなかった。すなわち、細胞種レベルで結合関係を眺めると、皮質構造は領野間で不均一であり、処理すべき情報に応じて結合様式が最適化されていると考えられる。 (2) シナプス結合部位の密度と位置に注目し、同期特性の検証を行った。細胞体や樹状突起の形状も同期性に影響することが判明し、今後はPV細胞の形態を正確に計測する必要があることが分かった。 (3) スライス標本を透明化するプロトコールを開発にした。膨張や収縮もなく、大幅な時間の短縮に成功している。また、電子顕微鏡観察に適した固定法・包埋法も確立し、今後は光学顕微鏡と電子顕微鏡をつなぐズームイン技術の確立を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特に大きな問題も生じず、順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
『構造無き機能は無い』という旗標を掲げ、大脳新皮質が高次機能を実現する仕組みの謎に、形態学的視点から挑む。高次機能発現や各種精神疾患との深い関連が指摘されている皮質GABA細胞に注目し、大脳新皮質の基本構築を明らかにする。近年、GABA細胞同士の結合解析が盛んに行われているが、どれも空間解像度が細胞体レベルに限定され、シナプス入力部位に関する解析は大きく後れを取っている。シナプス結合部位の違いは、神経細胞の活動性に多大な影響を与えることから、単一シナプスレベルで回路構造を解析することが、大脳新皮質の動作原理解明に必須である。また、理論解析を通じ、シナプス結合部位がネットワークの動作特性に与える影響を検証する。さらに、透明化技術の実践的応用開発も進め、次世代の形態解析法創成にも努める。 (1) M1におけるPV発現細胞へのシナプス入力について、これまでに得た知見をまとめていく。また、S1とM1において、PV発現細胞同士の相互結合を生理学的に検討する。分子生物学的見地からも、領野間の相違を検討する。さらに、SSOM発現細胞に対する各種シナプス様式の解析をS1において進めていく。 (2) 2つのPV細胞を相互に結合させ(2体対称結合系)、同期パターンの解析を進めている。モデル化に必要な形態パラメタの追加取得を行う。 (3) 光顕と電顕の対応(LM-EM correlation)を効率的に行う目的で、対象となる構造物をマーキングする技術を開発する。
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