研究課題
ヒメミカヅキモヘテロ株(他殖株)のゲノム解析より得られたCpMinus1は、性表現(接合型)を変える効果を持つ遺伝子であり、この遺伝子を異所的に発現させた+型は、-型へと性転換した。しかしこの形質転換体は、交配相手を与えない場合でも、ごく弱い生殖反応を示したことから、CpMinus1に加えて、完全な性転換には別の遺伝子の作用が必要と示唆された。そこで本研究では、性染色体様領域を特定し、座乗する遺伝子の特定と機能確認、CpMinus1との関係解明を行うことを第一の目的とした。今年度は、研究室内で確立したヒメミカヅキモ用CRISPR/Cas9システムを適用し、-型のCpMinus1遺伝子の破壊を行った。得られた5系統の遺伝子破壊株は、いずれも完全に+型性表現を示しており、-型特異的発現を示す遺伝子の発現は見られず、+型特異的発現を示す遺伝子の発現が高まった。このことより、+型ゲノムのみに存在するCpPlus1遺伝子が存在する可能性は否定的となり、CpMinus1遺伝子だけでほぼ性表現が確定することが明らかになった。また、CpMinus1と連鎖して、その性決定機能を補助する遺伝子の存在する可能性がますます高まった。また、ヘテロ株のゲノム情報をさらに改善するために、次世代シーケンサー(Illumina HiSeq 2000)を用いたこれまでの解析に、最新のP 6-C4ケミストリーを用いたPacBioシークエンサーによるデータを加えて、連続性の高いゲノムアセンブリーを得た。Illuminaのみによるアセンブルに比べて、連続性が高まったものの、平均contig長はまだ不十分な長さに留まっており、contig数も多かった。ホモタリック株1系統について、ゲノムレベルでヘテロタリック株との比較を行うため、PacBioシークエンサーでの解析に耐えられる高品質ゲノムの単離を行った。
2: おおむね順調に進展している
-型のCpMinus1遺伝子の破壊株の作出と評価に成功し、ヘテロ株の性決定におけるCpMinus1遺伝子の機能がより明確となった。また、長鎖ゲノムの調製に時間を要したものの、illuminaによるこれまでのアセンブリと比べて、大きくアセンブルは改善されており、まだ検討の必要はあるものの、概ね順調である。
交配子孫株についてIllumina Index シーケンシングを行い、領域を連鎖群に分離するとともに、連鎖群内で、性染色体様領域を絞り込むデータとする。また、10 x genomics chromiumによる、scaffoldingを進める。ホモ株のゲノム配列をPacBioシークエンサーにより解析する。
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Bio-protocol
巻: 6 ページ: e1813
10.21769/BioProtoc.1813
Frontiers in Plant Science
巻: 7 ページ: 1040
10.3389/fpls.2016.01040