福島第一原発事故により多量の放射性物質が海域へ流出し、環境や生物を汚染した。経年的にそれぞれの濃度は低下しているが、底質の濃度低下が遅い。この濃度低下に底質に付着する微細藻類がどの程度影響を及ぼすのか明らかでない。 本研究では、第1に底生微細藻類へのCsの主要な移行経路を明らかにすることを目的として、間隙水かそれとも底質の粒子(もしくは岩礁)の濃度分布および移行の検討、第2に微細藻類への移行量を検討し底質の環境学的半減期への影響の検討、第3に微細藻類起源の放射性Csの、沿岸生態系の底生生物への拡散過程およびその生物における濃度の検討を行っている。2018年度では、主にデータの解析および結果の取りまとめを進めた。 第1では、各種サンプル(海水、間隙水、底質)の放射性セシウム濃度の結果から底生微細藻類は底質に含まれた放射性物質も取り込んでいると考えられた。またこの取り込みに季節的な変化がないことを示した。第2では、松川浦底質の放射性Cs濃度分布を明らかにした。このことから、底生微細藻類の放射性Csをインベントリで表せる可能性があげられた。第3では、甲殻類としてキシエビを取り上げ、その生態学的半減期、生物学的半減期からそれぞれのエサによる放射性Csの取り込みを求めることができた。 これらの結果から底生の微細藻類は底質の放射性Csを積極的に取り込むこと、しかしながら、その絶対的な量が少ないことから生態系への移行は限定的と考えられた。第1から第3のそれぞれの結果はそれぞれ口頭発表を行い、取りまとめて論文作成を進め、国際誌への投稿準備を行っている。
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