研究実績の概要 |
1)新規症例の全エクソーム解析: H29年度に37症例の全エクソーム解析を施行した。うち、14症例(38%)で病的変異を同定した。XHMMとNord scriptの2つのアルゴリズムを用いたコピー数解析によって、1p36欠失症例を1例と6q22.1 の130kb の欠失が同定され、コピー数解析の有用性が再確認できた。
2)新規責任遺伝子の同定: てんかん性脳症の新規責任遺伝子としてシナプス可塑性に重要なCa2+依存性のセリン/スレオニンキナーゼ(CaMKII)のαおよびβサブユニットをコードするCAMK2A, CAMK2B遺伝子のde novo変異を同定し、変異体ではCa2+非存在下の自己抑制が障害され、リン酸化が亢進していると考えられる知見を得た。また、小胞体に局在し、自然免疫に重要なToll様受容体タンパク質などの正しい折り畳みと細胞内の分布に関与するCNPY3遺伝子の劣性変異を同定し、患者で認められる所見と類似する脳波異常がCnpy3ノックアウトマウスで観察された。
3) 変異ノックインマウスモデル: CRISPR/Cas9ゲノム編集システムを用いてヒト変異をノックインした4系統のマウスにおいて、組織学的あるいは行動学的な異常を認めた。特に2系統では患者と類似した症状が認められており、モデルマウスとして病態解明に寄与すると考えられる。また、内在性の発現が極めて低く、特異的な抗体が市販されていない原因遺伝子に関しては、FlagおよびHAタグをゲノム編集で挿入することに成功した。
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