研究課題/領域番号 |
16H05386
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
古本 祥三 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 教授 (00375198)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | PET / 心筋イメージング / ホスホニウム |
研究実績の概要 |
本研究では、心筋血流イメージング(MPI)に応用可能な独自の新規18F-ホスホニウム型トレーサー(TAP)化合物の合成法とそれによる新規TAP化合物の開発を目的としている。平成29年度は、これまで開発してきたTAP化合物の構造最適化(臨床候補化合物の開発)を目指した。
今回、新たにピリジン環を含む誘導体4種類とTAP可変構造部位にアルキル側鎖を有する2種類の誘導体合計6種類を新たに設計し、合成を試みたところ、ピリジン誘導体3種類、アルキル誘導体1種類、合計4種類について18F標識体を合成することができた。標識合成に成功しなかった化合物については、18F標識の反応条件に対して前駆体が不安定であったこと、また2ステップ目のオニウム化反応に対して求電子試薬が副反応を起こしたことが推察された。4種類の標識体の内、2種類の誘導体は非常に優れた心筋集積性を示し、ラット-PET撮像においても心筋を明瞭に描出することに成功した。そしてこれらの新規誘導体とこれまでに開発した誘導体について心筋集積率と心臓/肝臓集積比を比較し、その中で最も優れた結果を示した標識体18F-TAP-Xを最適化合物として選出した。
続いてMC-I結合型MPIトレーサーの18F-Flurpiridazの体内動態評価を行い、心筋PETイメージング性能について18F-TAP-Xとの比較を行った。その結果、18F-TAP-Xは心筋に集積後そのまま滞留するが、18F-Flurpiridazの心筋集積は経時的に減少するという異なる心臓動態性を示すことが明らかになった。画像コントラストの指標となる心臓/肝臓集積比は18F-TAP-Xの方が優れた値を示した。以上の結果より、本研究においてTAP誘導体の最適化を進め、また最適化合物の動態特性を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の平成29年度の目標は、心筋血流イメージング剤として優れた性能を有し、臨床候補となる18F-TAP誘導体の最適化を実現することであり、また、その有用性を明らかにすることである。まず、新たな部分構造を有する誘導体の設計と合成を行い、またその生物評価を行って、心筋集積特異性を最大限に高めることができた。それによって誘導体18F-TAP-Xを最適化化合物すなわち臨床候補化合物として開発することに成功した。そしてTAP評価と同じ生物実験系で、現在世界で最も臨床開発が進んでいるFlurpiridazの心筋集積特性評価を行い、18F-TAP-Xの心筋イメージング指標はFlurpiridazと同等以上との結果が得られ、その心筋イメージングの有用性については十分に実用的であるあることが示唆された。以上より、本研究は概ね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は本研究課題計画の最終年度に当たり、研究全体での最終目標としては、臨床研究にトランスレーショナルできる18F-TAP薬剤(注射液)を開発することである。当初は、3年目に健常者を対象とした探索的安全性評価PET撮像を行う計画であったが、臨床研究法の施行開始により新規臨床研究を申請し承認を得るには時間が足りなくなることが判明したため、ヒトでのPET撮像については、研究期間中の実施を断念することとした。しかし、研究計画期間終了後には臨床PET研究が実施できるように申請等の手続きは継続的に進めることとする。平成30年度の具体的な研究推進内容については、当初の計画通り、自動合成装置による標識合成条件の最適化を行う。さらに臨床用の無菌注射液製造(調剤)方法を確立する。そして実際に標識合成の3ロット製造試験を実施し、無菌試験等の安全性評価を行う。このようにして得られた標識薬剤の有効性を検証するために、臨床で使用されているSPECT用の心筋イメージング剤との心臓集積動態に関する比較評価実験を実施する。最終的にこれらのデータを集約して臨床研究プロトコールを作成し、申請手続きの着手を目指す。
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