研究課題/領域番号 |
16H05418
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中村 雅史 九州大学, 医学研究院, 教授 (30372741)
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研究分担者 |
大塚 隆生 九州大学, 大学病院, 准教授 (20372766)
大内田 研宙 九州大学, 大学病院, 助教 (20452708)
宮坂 義浩 九州大学, 大学病院, 助教 (40507795)
森山 大樹 九州大学, 大学病院, 助教 (70586859)
三好 圭 九州大学, 大学病院, 助教 (70755272)
江口 大樹 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (90726390)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 膵癌 / 腹膜中皮細胞 / リーディングセル / 癌間質相互作用 / 間質リモデリング |
研究実績の概要 |
本研究は、転移を導く臓器特異的リーディングセルの解明と微小転移環境リモデリングの制御を目的とする。これまでに、様々な癌腫における腹膜播種形成に重要な役割を果たしていることが最近明らかになってきたが、膵癌での腹膜播種形成におけるPMCの役割については明らかではない。本研究では、in vitro、in vivoにおいて、腹膜播種形成に関わる膵癌細胞(pancreatic cancer cell; PCC)と腹膜中皮細胞(peritoneal mesothelial cell; PMC)との相互作用について検討した。In vitroでは、PCCとPMCとの腫瘍間質相互作用により、PCCとPMCの相互の遊走能や浸潤能が有意に促進され、また、PCCの増殖能やアノイキス抵抗性も有意に促進された。3次元培養腹膜播種モデルにおいて、PCCとPMCとの共培養群ではPCC単独群と比較して有意にコラーゲンゲル内へ浸潤する細胞の増加を認めた。PMCはコラーゲンゲル内では癌細胞を先導するように浸潤し、コラーゲン線維をリモデリングすることにより、浸潤した細胞に沿って平行な線維方向を増加させた。KPC (LSL-Kras G12D/+;LSL-Trp53 R172H/+;Pdx-1-Cre)マウス(遺伝子改変膵癌自然発生マウス)の腹膜播種組織では、癌細胞が存在しない部位ではPMCは単層を保っている一方、癌細胞の浸潤境界において、PMCは増殖し、筋層への浸潤を認めた。In vivoにおいて、PCCとPMCとの腹腔内への共移植群において、PCC単独移植群と比較して腹膜播種形成は有意に促進された。PMCが腫瘍間質相互作用に関連する増殖因子以外にも、平行線維の配向を増加させることによってPCCの方向依存性の浸潤を促進する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験計画どおりに膵癌腹膜播種形成に関わる、膵癌細胞と腹膜中皮細胞との間質相互作用についての研究を行った。 具体的には、腹膜中皮細胞が液性因子を介する他にも、膵癌細胞を先導するように浸潤し、また間質をリモデリングすることにより浸潤する可能性が示唆された。 これらの内容を学会で発表、また論文として報告し、一定の進捗があったと考える。
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今後の研究の推進方策 |
腹膜中皮細胞の中でも、特異的な間質細胞集団の同定、またその制御による新規膵癌転移制御法の開発を行う。 また、腹膜中皮細胞だけでなく、血管内皮細胞でも同様の実験を行い、リーディングセルなどの評価を行う。
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