研究課題
本研究では、新規に合成した超分子薬剤の全身投与によって、継続的に内膜肥厚ならびに動脈硬化症に起因する疾患を薬物治療する新規治療戦略を確立することを目的にしている。本年度は、環状構造を有する疎水性低分子薬剤と親水性高分子を用いて新規水溶性超分子医薬を合成する化学技術の確立について注力した。具体的には核磁気共鳴スペクトルを用いて核オーバーハウザー効果を観測することにより、両末端官能性ポリエチレングリーコールとラパマイシンの分子間相互作用を確認し、また、それぞれの空間的に近い距離にある原子対を同定した。さらに基質の濃度や溶媒などによって、超分子薬剤の形成が効率良く起こる合成条件を見出した。生成した超分子薬剤については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで分析後、その分子量に併せて分収することで問題なく精製できることを確認している。一方、動脈硬化症の実験モデル動物に関しては、血管内膜肥厚と動脈瘤に関するラットモデルを試作し、ヒト疾患の病変と類似していることを組織学的に確認するに至っている。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、環状構造を有する疎水性低分子薬剤と親水性高分子からなる新規水溶性超分子医薬を合成に取り組んでいる。同超分子医薬の生成については、溶解性やクロマトグラフィーのシフトなど、断片的な現象が先行して捉えられていたが、今回、核オーバーハウザー法を用いて化学的事象として確認できたことは大きな進展であると考えられる。
本年度に引き続き超分子医薬の合成に取り組む。さらに、精製薬剤については、薬効や毒性などに関して培養細胞を用いた生物学的評価を進める。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 11件) 備考 (1件)
Molecular Pharmaceutics
巻: 13 ページ: 2108-2116
DOI: 10.1021/acs.molpharmaceut.6b00219
PLOS ONE
巻: 11 ページ: e0157813
DOI: 10.1371/journal.pone.0157813
http://www.bmc.t.u-tokyo.ac.jp/