研究課題
Ⅰ.目的 高齢者の日常の食生活における咀嚼筋活動量を様々な食品の摂取量より推察し,歯数や咬合力などの口腔内の状態とどのような関連があるかを検討した.Ⅱ.方法 対象者は,79-81歳の地域高齢者男性360人,女性413人 とした.調査項目は,口腔指標として残存歯数,最大咬合力(デンタルプレスケール,ジーシー社) ,平均ポケット深さ,唾液分泌速度を測定し,食品摂取に影響を与える社会経済的因子として性別,教育歴,経済状況を聴取した.咀嚼筋活動量は,食品固有のかたさ,凝集性,ひずみから,各食品を一定量摂取した場合の咀嚼筋活動量(mV・sec) を算出し1),食事歴法質問票(Brief self-administered Diet History Questionnaire) から得られた1日あたりの各食品の摂取量(g) を求め,両者を積算し,それぞれの食品ごとの咀嚼筋活動推定量とした.得られた各食品の咀嚼筋活動推定量を合計し,総咀嚼筋活動推定量とした.統計学的分析には,各口腔指標と咀嚼筋活動推定量との2変量間での関連を検討するために, Mann-WhitneyのU検定を用いた.さらに総咀嚼筋活動推定量を従属変数とし,教育歴,経済状況,各口腔指標を独立変数としてロジスティック回帰分析を行った.Ⅲ.結果と考察 男性では低活動量群と正常群の間で,咬合力のみ有意な差がみられた(p=0.023).女性では,咬合力(p=0.010) に加え,残存歯数(p<0.01) でも2群間で有意な差がみられた.ロジスティック回帰分析の結果,社会経済的因子を調整した上でも,2変量間での分析と同様に,男性では咬合力のみが,女性では,咬合力と残存歯数が総咀嚼筋活動推定量と有意な関連を認めた.以上のことから,咬合力が低い高齢者は,固い食品の摂取を避け,日常生活の咀嚼筋活動が低下していることが示唆された.
2: おおむね順調に進展している
十分な参加者がえられ,栄養と口腔機能のデータ収集,整理,栄養学の専門化との分析も順調に進んでいる.
次年度は,86歳のデータ収集の予定であるが,高齢であるので,会場調査に参加できない方には,適宜訪問調査も組み入れ,追跡調査者の確保に努める.
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件)
JDR Clinical & Translational Research
巻: 2 ページ: 187-197