研究課題/領域番号 |
16H05526
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
大久保 力廣 鶴見大学, 歯学部, 教授 (10223760)
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研究分担者 |
佐藤 洋平 鶴見大学, 歯学部, 講師 (10410052)
新保 秀仁 鶴見大学, 歯学部, 助教 (40514401)
鈴木 恭典 鶴見大学, 歯学部, 講師 (70257335)
栗原 大介 鶴見大学, 歯学部, 臨床教授 (70535773)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | パーシャルデンチャー / 積層造形 / 切削加工 / ワンプロセス加工 / フルデジタル製作 / デジタルデンチャー / 3Dプリンティング / CAD/CAM |
研究実績の概要 |
昨年度行った積層造形と切削によるワンプロセス加工法を用いて製作したエーカースクラスプにおいて,表面性状,加工精度と維持力の変化および耐久性を明らかにした.しかしながら,支台歯金型の鉤体からレストへの移行部が鋭角であり,切削バーの直径の大きさに依存して,十分な適合を得ることは困難であった. そこで本年度は,エーカースクラスプの設計を行う際に,既存の専用デジタル設計システム(DWOS)を使用して鉤体-レスト移行部をデジタルリリーフし,適合精度の向上を目的とした新たな検証を行った. 第一大臼歯を想定した樽状金型支台をデスクットプスキャナーにて読み込みデジタルデータ化し,デジタルリリーフ後,エーカースクラスプの設計を行なった.(株)松浦機械製作所の技術協力のもとに最新の金属光造形複合加工機(Lumex Avance-25)を使用して,Co-Cr合金粉末から積層造形・切削ワンプロセス加工によりCo-Cr合金クラスプ試料の製作を行った.サポート部の切断後に,フレームワークの非破壊検査を行い,レストとクラスプアーム内面の表面粗さを既存の形状測定機(NH-3N)により測定した.その後,クラスプ試料を金型模型に5kg荷重下で設置し,適合精度と初期維持力を測定した.さらに,当講座で開発した繰り返し着脱試験機(JM100-T)を使用して,10万回までの着脱試験を行い,維持力の変化と耐久性を測定し,新規製作法によるクラスプの補綴学的評価を行った.その結果,デジタルリリーフにより適合精度の向上が確認でき,維持力および耐久性にも問題ないことを検証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では積層造形・切削のワンプロセス加工によるクラスプの適合精度と物性の検証をCo-Cr合金,純チタン,Ti-6Al-7Nb合金の3種類で行うはずであったが,Co-Cr合金による適合試験と維持力の測定までしか達成できていない.しかし,臨床での設計に近いリリーフをデジタル上で行うことができ,適合精度と物性の検証ができた. 一方,積層造形・切削のワンプロセス加工による複数のエーカースクラスプを設置した小型フレームワークを製作し,実際の口腔内に試適し,適合,維持力の両面から十分臨床応用可能なことを確認した.次年度は引き続きCo-Cr合金,純チタン,Ti-6Al-7Nb合金におけるクラスプの精度と維持力,耐久性の検証を行う予定である.また,積層・造形ワンプロセス加工による大型フレームワークの製作に着手できなかったため,次年度は大型フレームワークの製作に着手する.その際には,両側性遊離端欠損の歯列模型をデジタルデータ化し,既存の専用デジタル設計システム(DWOS)を使用してパーシャルデンチャーフレームワークの設計を行う.フレームワークデータをもとに,前述の金属光造形複合加工機によりフレームワークを製作するが,実際の製作に要する時間を測定し検証する.さらに,大型フレームワークの精度と全体の維持力を前述の試験機により測定し,3種類の金属による検討を行う.加えて,前年度製作した鋳造,ミリング,積層造形の3種類の大型フレームワークと比較検討し,同加工法の最終的な補綴学的評価を行う.
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今後の研究の推進方策 |
フレームワークのデジタル製作に関してはCo-Cr合金クラスプの金型上での適合試験と維持力の測定までは終了している.また,デジタルリリーフで製作したクラスプに関しての適合試験と維持力も確認が出来た.引き続きCo-Cr合金,純チタン,Ti-6Al-7Nb合金において積層・造形ワンプロセス加工によるクラスプの適合精度と耐久性に関するさらなる詳細な検証を行う.すべての検証が終了した後に,積層・造形ワンプロセス加工による大型フレームワークの製作を行う予定である. その後パーシャルデンチャーのフルデジタル製作に着手する.その際には,三井化学(株)の技術協力のもとに2種の加工法により義歯床と人工歯の製作を行う. 1) ミリング:高強度PMMAレジンブロックから義歯床を切削加工する. 2) 3Dプリント:高強度PMMAレジンを3Dプリント用に加工し,利用する. すでに高強度PMMAレジンブロックは製品開発されており,デジタルデータをもとにした早期の製作加工は可能である.ミリング,3Dプリントにより製作された義歯床の適合性と強度を比較検討し,最適加工法の選定を行う. その後に,アセンブリ式およびワンピース式製作法を用いて,小型義歯から試作を行い,適合性と耐久性について検証する.最終的にはフルデジタルにより製作したパーシャルデンチャーの口腔内装着を目指す.
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