モリンガ凝集剤を用いた水処理後のDOCの増加については昨年までから引き続き、ジャーテスターで凝集実験を行い、凝集能および残留DOC等の処理後水質を評価した。昨年までの成果から、よい条件を見いだせていたので、本抽出物を用いた凝集を膜ファウリングの制御などへの利用することも検討した。昨年に引き続き、異なる前処理や抽出条件で作成したモリンガ凝集剤の残留DOCと凝集活性については、前洗浄無しの抽出と比べ、最適条件での抽出(前洗浄後・塩抽出)では高い凝集活性を示しつつ、残留DOCをブランク(凝集剤無添加)程度に維持、即ちモリンガ凝集剤の不純物をほぼ除去できていることを、自然水に対しても確認した。膜ファウリングの制御にも有効であり、水質を悪化させないことも確認できた。 さらにモリンガ凝集剤を使用した際の汚泥のリサイクル性も不明であったが、実河川水を対象に凝集沈殿処理を行って得た汚泥を用いた栽培試験も、日本(当学のビニールハウス)とマレーシア(サバ州に畑を借用)で行った。ここでは土に混ぜたモリンガの栽培実験を各種行い、草体の草丈、重さなどに加え、土壌に含まれる可給態リン酸量、土壌・植物に含まれるリン、アルミニウム濃度などを測定した。モリンガ汚泥と一般的な浄水汚泥(PAC汚泥)を土に混ぜ栽培したモリンガに含まれているリン濃度を測定したところ、モリンガの汚泥を利用した系で、成長が悪くなることもなく、モリンガの葉・茎・根に含まれているリン濃度が高いことが分かった。これにより、栽培実験によりその汚泥の植物への有害性は低く、むしろ肥料効率が良い可能性が示唆され、モリンガ凝集剤による汚泥のリサイクル性を確認できた。
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