研究課題/領域番号 |
16H05736
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大塚 雄一 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 准教授 (40314025)
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研究分担者 |
小川 泰信 国立極地研究所, 国際北極環境研究センター, 准教授 (00362210)
細川 敬祐 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (80361830)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | GPS / GNSS / 電離圏擾乱 / オーロラ / 極冠 |
研究実績の概要 |
ノルウェー・トロムソに設置した3台のGNSS受信機で得られたGPS信号強度の相互相関係数から電離圏電子密度不規則構造の水平面内ドリフト速度を求め、S4及び全電子数の変動を表す指数であるROTIと比較した。ROTIの増大時の平均ドリフト速度は、増大のない時間帯に比べておよそ10m/sから30m/s速いことが分かった。これは、電子密度の不規則構造は空間スケールが大きいほど粗密の振幅が大きく、ドリフト速度が大きい場合には、空間スケールが大きい不規則構造が電波の経路上を移動し、大きな全電子数変動をもたらしたためと考えられる。 2015年3月17日に発生した磁気嵐中の電離圏不規則構造分布の時間・空間変動とその発生メカニズムを解明するため、稠密GPS受信機網のデータに加えてDMSP衛星とSuperDARNレーダーデータの解析を行い、磁気嵐時に出現する三つの特徴的な電離圏不規則構造分布を発見した。一つ目は、夕方側においてStorm Enhanced Density (SED)と同時に観測された電離圏不規則構造であり、SEDに伴って発生する不規則構造と、SEDとは別のところで発生し、背景のプラズマ流に運ばれてSEDに合流する不規則構造の存在が示された。二つ目は、真夜中で観測された経度方向に広がる帯状の電離圏不規則構造分布で、磁気圏からの粒子降り込み領域よりも不規則構造の発生領域は緯度2度程度低緯度まで広がっていることから、粒子降り込み以外に電離圏不規則構造が発生する原因が存在することが示唆された。三つ目は、真夜中から朝方の間の領域で観測された経線方向に伸びる波長約500 kmの波状の不規則構造の分布である。プラズマ流速度観測データとの比較により、ケルビン・ヘルムホルツ不安定によって波状構造が生成したことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
従来はGPSのみであったが、近年、GPS以外のGalileo衛星等のGNSSデータが使用可能になった。このためデータ量が増えるとともに、データ処理の方法を変更する必要が生じたため、処理方法の検討に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
これまで継続してきたノルウェー・トロムソでのGNSS受信機、及びビーコン受信機による観測を継続するとともに、ロングイヤービエンに設置したGNSS受信機及び、ニーオルセンに設置したビーコン受信機によるシンチレーション及び電離圏全電子数の観測を行い、オーロラ域からカスプ・極冠域にかけて発生する電離圏擾乱を観測する。ロングイヤービエンに設置した3台のGNSS受信機を用い、GPSだけでなくGalileo衛星の電波も使用し、電離圏擾乱の移動速度を測定する。他地域で得られた多数のGNSS受信機データを活用し、電離圏全電子数のグローバル水平二次元構造を明らかにし、シンチレーションを起こす電離圏擾乱との関係を調べる。得られたデータをもとに、異なる周波数の電波を用いることにより、イレギュラリティの空間スケールによる違いを調べ、赤道や中緯度に発生するイレギュラリティと比較する。また、AOGSやAGU、JpGU、SGEPSSなど国内外の会議に参加し、研究成果発表や関連研究者との研究打合せを行う。
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