本研究では、福島第一原子力発電所(以降、原発)事故後の複合リスクの評価と諸対策の費用効果分析および仮想的な原発事故を想定した際のリスク管理戦略の構築に資することを目的とした。福島原発事故によってもたらされた放射線被ばくよりも、糖尿病や心理的苦痛のリスクの方が1桁以上高かった。食品出荷制限・除染・ホールボディカウンターによる内部被ばく検査といった放射線被ばく対策は、一般的な糖尿病対策と比べ1-4桁以上費用対効果が悪かった。さらに、仮想的原発事故時における食品出荷制限や除染の費用効果を明らかにした。原発事故がもたらす多様なリスクに対し、多角的でバランスよい対応をとることの重要性が示された。
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