平成30年度は核内AGOがどのような特徴を持つ小分子RNAと好んで機能複合体(RISC)を形成するのかを明らかにするとともに、異なる核内AGO間でドメインスワッピングを行い、小分子RNAの認識に関わるドメインを明らかにした。具体的には以下の通りである。 これまで核内DNAメチル化に関わるAGO4とAGO6は24塩基かつ5′末端の塩基がアデニン(A)の小分子RNA(24A)と好んでRISCを形成することが知られていた。しかしながら、24Aは細胞内で最も多い小分子RNA種であるため、AGO4とAGO6自体がどの程度24Aを選択しているのかという定量的なデータは存在しなかった。試験管内系を用いてAGO4・AGO6の小分子RNA選択性を詳細に解析した結果、AGO4とAGO6は共に24Aを積極的に選択するが、AGO6はAGO4に比べてより厳密に5′末端にアデニンをもつ小分子RNAを見分けていることが明らかになった。一方、小分子RNAの長さに関しては逆の傾向が観察された。つまり、AGO4は24塩基の小分子RNAのみを特異的に選択するのに対し、AGO6は21塩基の小分子RNAとも効率よくRISCを形成することができた。このように本研究によってAGO4とAGO6は異なる小分子RNAの選択性を持つことを明らかにした。 次にAGO6の厳密な5′A選択がどのドメイン・モチーフによって行われているのかをAGO4とAGO6間のドメインスワッピングを行うことで調べることにした。現在まで複数種の活性のあるキメラAGO4/6を作成することに成功しており、予備的ながら予想外のドメインが5′塩基選択に関わるという興味深い結果を得ている。
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