研究課題/領域番号 |
16H06278
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中野 貴志 大阪大学, 核物理研究センター, センター長教授 (80212091)
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研究分担者 |
福田 光宏 大阪大学, 核物理研究センター, 教授 (60370467)
渡部 浩司 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 教授 (40280820)
羽場 宏光 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, チームリーダー (60360624)
菊永 英寿 東北大学, 電子光理学研究センター, 准教授 (00435645)
酒見 泰寛 東京大学, 原子核科学研究センター, 教授 (90251602)
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研究期間 (年度) |
2016 – 2018
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キーワード | 短寿命RI / 加速器 / プラットフォーム / 科研費支援 |
研究実績の概要 |
近年、物理、化学、生物学の基礎研究から、工学、農学、薬学、医学分野の応用研究に至る幅広い研究分野でRIの需要が増加してきており、特に寿命が短い、或いは生成量が極めて限られるなどの理由から、コマーシャル市場では手に入らない短寿命RIの供給を求める声が急激に高まっている。そこで、本プラットフォームでは、科研費を取得して最先端の多様な研究に取り組んでいる研究者のニーズに応えるため、RI製造に適した加速器を有する4施設(大阪大学核物理研究センター(RCNP)、国立研究開発法人理化学研究所仁科加速器研究センター(RIBF)、東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター(CYRIC)、東北大学電子光理学研究センター(ELPH))が密に連携し、市販されていない基礎開発・研究用短寿命RIを加速器で製造してユーザーの希望する時期に必要な数量を供給する体制を整備した。これにより、年間を通じた短寿命RIの安定な供給が可能となり、またRIの取扱いに不慣れなユーザーを対象とした技術講習会を開催して安全なRI取扱いの技術支援なども実施してRI利用の普及に努め、先進的な研究や学際的な研究が格段に発展するための研究支援基盤形成を進めている。 本プラットフォームが支援する研究課題を選択するため、H28年5~6月とH28年11~12月に公募を行い、6名の外部委員と4名の内部委員から構成される課題選択委員会(委員長は中西友子東大特任教授)において厳正な審査を実施して科研費を既に取得している研究課題16件(RCNPから4件、RIBF5件、CYRIC5件、ELPH2件)を採択し、ユーザーの要望に沿った時期に4施設から短寿命RIを供給した。また、RI利用の初学者の指導やRI技術者の人材育成、研究用RIの安全な取扱いのための技術支援などを目的としたRI技術講習会をH28年9月29、30日とH29年2月9、10日に東北大学CYRICにおいて開催し、約40名の参加者に対して講義と実習を行った。一方で、本プラットフォームの活動を周知するために、専用のホームページを開設すると共に、学会や各種の学術集会での発表、学術雑誌への寄稿などを通じて本事業の紹介と説明を行った(8件)。なお、本プラットフォームの円滑な運営のために毎月1回、定例のネットワーク会議を開催し、4施設間の情報共有と懸案事項の審議等を適宜実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、大阪大学核物理研究センターが中核となって4つの加速器施設を束ね、定期的なネットワーク会議の開催やメーリングリストを活用した情報交換・共有により本プラットフォームの円滑且つ効率的な運営体制を築いた。外部のRI利用者に対しては、要望や相談を受け付ける窓口をRCNPに一元化し、利便性と機動性を重視した対応が可能になるように運用体制を整備した。 本プラットフォームが採択した科研費課題は15件であり、本プラットフォームへの応募者20名のうち、半数の10名が新規ユーザーであったことはRI利用分野の開拓という点において本事業の大きな成果と考えられる。また、本プラットフォーム事業以外でRIを供給した件数は、理研での利用件数が12件から59件に大幅に増えたことをはじめとして、4施設で合計110件にも及び、科研費申請時に比べて大きく数字が伸びたのは本事業の顕著な波及効果と考えられる。これは、今後も研究用の短寿命RIの需要そのものが右肩上がりの傾向にあることを示唆しているものと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
潜在的なRI利用の需要を発掘するため、本支援プラットフォームの利用が予想される学会及びコミュニティに公募案内及び採択結果をメール配信するとともに、支援のプロセスや支援の内容、利用可能なラジオアイソトープや設備等の情報をまとめたWEBページを整備し、発信する情報を充実させていく。また、シンポジウム・研究会等を本支援プラットフォームが主催し、支援課題で得られた学術的な成果より、支援内容や方法等、技術的な側面に重点を置いた内容にして、新規ユーザーの参入や短寿命RIを用いた新たな研究の萌芽を促すことを目指す。日本核医学会や日本薬学会等、多くの利用が期待される学会に課題選択委員会委員の推薦を依頼するとともに、日本アイソトープ協会や、本プラットフォームに参加していないRI供給機関からも委員を受け入れ、本プラットフォームでの支援が真に必要不可欠であることを担保し、より効果的なニーズの把握及び発掘のための助言と協力を得ていく。 本プラットフォームに参加していない複数の加速器施設から参加の意思が表明されており、連携を組む加速器施設の数を増やして年間を通じたより安定的なRI供給を目指す。また、利用料の徴収等でプラットフォームの財政基盤が強化できると想定される場合には、新たな連携機関を積極的に迎え入れるように体制を整える。加速器を持たないRI取扱施設であっても、ユーザーに対する技術的な支援の格段の充実が見込まれる場合には、有機的な連携の可能性を検討していく。 今後、ユーザー側の都合によるビームタイムのキャンセルや加速器の予期せぬ故障等でRI供給支援が計画通りに進まない事態も発生し得ることから、年度の途中で計画の見直しができるように、より柔軟で効率的なプラットフォーム運営を目指す。
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