研究課題
光感受性チャネル:チャネルロドプシンのイオン流入の分子機構を明らかにするため、SACLA自由電子レーザーを用いた時分割構造解析を行い、励起光照射した後1, 50, 250, 1000, 4000マイクロ秒後における構造変化を明らかにした。その結果、発色団レチナールにおけるall-trans型から13-cis型への異性化に伴ってレチナールが横方向への転移に伴い、膜貫通へリックスが玉突き様に構造変化し、イオン透過経路における狭窄部位が広げられるように変化することがわかった。また最長波長で活性化されるChRであるChrimsonの結晶構造解析に成功し、構造に基づいてさらに20nm長波長シフトする改変体の創出に成功し、Nat. Commun.に論文を発表した。音感膜タンパク質:聴覚や平衡感覚の受容に関わる機械刺激受容チャネルTransmembrane channel-like protein1/2 (TMC1/2)について、大量かつ均一に精製し、リポソームパッチクランプを行うことで、膜張力に応じたチャネル活性を検出することに成功し、現在Cryo-EMによる構造決定を進めている.これと並行して,ヒト由来Prestinは。コンストラクションを工夫することで、世界で初めてCryo-EMにより立体構造を解明し、電位依存的に膜を振動させる機構を解明した.温度感受性チャネル:TRPV3に関して、ナノディスクを用いて脂質中の構造をCryo-EMを用いて3.2Aで決定した結果、脂質に依存して温度依存的にチャネルが開閉する機構を明らかにした。機械刺激チャネル:細胞体積の調節に働く浸透圧感受陰イオンチャネル、LRRC8の構造を様々な状態でCryo-EMを用いて決定した結果、細胞内のイオン強度によってチャネルが開閉する機構を示唆することに成功し、Nat. Struct. Mol. Biol.に発表した。
1: 当初の計画以上に進展している
光感受:最も長波長に吸収ピークをもつChR である Chrimson の構造を2.8Aにて決定し、立体構造に基づいて理論的な設計を行うことで、さらに20nm長波長シフトし、世界最長の吸収波長を持つChrimson-SAを創出することに成功し、神経科学の発展大きく寄与している(Nat. Commun.に発表)。さらに、ChRのX線自由電子レーザーを用いた分子動画解析を行い、光受容に伴ってチャネルが開く機構を解明することに成功し、論文を作成中である。音感覚:さらにTMC-2に関して、コンストラクションを工夫することで、Cryo-EMを用いた単粒子解析に適した試料調製に成功し、構造解析を進めている。また、音感を増幅する電位依存性モータータンパク質Prestinの構造解析に世界で初めて成功し、音感増幅の機構を解明した。温度感受:TRPV3に関して、ナノディスクを用いて脂質中の構造をCryo-EMを用いて3.2Aで決定した結果、脂質に依存して温度依存的にチャネルが開閉する機構を明らかにした。浸透圧感受:LRRC8は近年同定されたCl-イオンチャネルで、細胞膨張を感知してCl-イオンを細胞外へと放出することで、細胞体積の維持に寄与する。これまでの解析からLRRC8は五量体を形成して機能することが知られているものの、その詳細な立体構造が報告された例は無かった。本研究では、Cryo-EMを用いてLRRC8A(6)の立体構造を4.25A(膜貫通領域は3.8A)分解能で明らかにし、イオン透過孔形成機構やチャネル活性化機構を明らかにすることに成功し、Nat. Struct. Mol. Biol.に発表した 。またLRRC8D(6)の構造決定に成功し、N末端のへリックスがふたのように働いて、イオン透過を調節している機構を発見した。
ChRのXFELを用いた時分割構造解析に関しては、現在論文を執筆中であり、数ヶ月以内に投稿する予定である。Chrimsonに関しては、神経科学者と共同研究を行い、本研究で開発したChrimson-SAを用いて自分たちの手で脳の深部の現象を光遺伝学で解明する。浸透圧感受により細胞体積を変化させるLRRC8チャネルに関しては、LRRC8D(6)の構造が解けており、N端へリックスによるゲーティング機構を変異体解析により解明し、論文を数ヶ月以内に投稿する。また、音感チャネルTMCに関しては、liposome patchによりシングルチャネル電流が観測されており、様々な生物種のTMCチャネルをスクリーニングしてクライオ電顕単粒子解析を目指す。プレスチンに関しても、Cryo-EMで驚くべき構造が解けたので、電気生理解析を用いた変異体解析を行い、一刻も早い論文化を目指す。さらに温度センサーであるTRPV3に関しても、脂質依存的なチャネルの開閉機構を明らかにしており、1か月位以内に論文を投稿する。さらに、阻害剤や温度変化による構造変化をCryo-EMを用いて解明し、温度依存的なチャネルの開閉機構の全容を解明する。さらに電位依存性Cl-チャネルVCCN1や電位依存性ATPチャネルCALHM1,2のCryo-EMを用いた構造解析に高分解能で成功しており、現在電気生理解析を用いた変異体解析を行っており、数カ月以内に論文を投稿する。
すべて 2019 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (19件) (うち国際共著 5件、 査読あり 17件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 8件、 招待講演 9件) 備考 (3件)
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