研究課題
脂質分子の分子間相互作用は脂質ラフトの形成機構の中心的課題である。この捉えどころのない相互作用について実験的知見を得るために、モデル脂質二重膜を用いて代表的ラフト脂質であるスフィンゴミエリン(SM)とコレステロール(Cho)で形成されたナノドメインの性質を調べた。SMの構造類似体でさらに分子間相互作用が強い4,5-ジヒドロSM(dhSM)を用いて、Choのある状態とない状態でのdhSMの集合体形成を精査した。その結果、dhSMがCho非含有膜において集合体を形成することを明らかにし、Cho機能に関する従来の考えを修正する知見を得た。また、前年度までのSMに関する実験をより一般的な膜脂質に拡張した。すまわち、細胞膜モデルとしても用いられる不飽和脂肪鎖を含むフォスファチジルコリン(POPC)を重水素と炭素-13で標識した脂質を化学合成し、膜物性を左右するアシル鎖の構造と配向を分析するために、固体NMR(REDOR法)に供した。その結果、不飽和脂肪鎖の二重結合付近の立体配座を選択的に観察することに成功した。すなわち、二重結合に隣接する炭素-炭素単結合において顕著な揺らぎが認めらえた。また、新たな脂質として、メチル分岐を有する人工脂質DPhPC(ジフィタノイルPC)について詳細な配向解析を行った結果、bent配座と名付けた平均配向が膜脂質を安定化することを見出した。さらに、膜一回貫通タンパク質と糖脂質の相互作用を、化学合成した蛍光標識した膜貫通ペプチドと標識糖脂質を用いることによって実験的に扱うことに初めて成功し、その親和性を見積もった。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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