本研究は、19世紀末以降におけるロシア音楽の「自己覚醒」に対し、マスメディアが果たした役割を検証することにある。このような目的のもと、当時のロシア・ソ連の音楽雑誌において報告されたロシアの歌劇文化の実態内容と、ロシア音楽自体の本質に関する音楽美学上の言説をとりあげた。 その結果、19世紀末以降の古儀式派による芸術メセナを背景として、古儀式派による私立歌劇場と、ロシア各地方都市及びロシア周辺地域の歌劇場との間に、人とオペラ作品の移動を通しての緊密なネットワークが構築されており、ロシア音楽界のマスメディアが、これをロシア音楽におけるナショナリズムと位置付けていたことが明らかになった。
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