研究実績の概要 |
シスチン輸送体xCTの阻害により誘導される細胞死経路(Ferroptosis)の解明を目指し、xCT遺伝子欠損(xCTKO)マウスおよびマウス由来培養細胞を用いて検討を行なった。 前年度の研究によりxCTKOマウス腹腔内から分離したマクロファージはグルタチオン(GSH)が枯渇し、活性酸素レベルが高いにも関わらず、培養条件下で生存可能であることがわかった。マクロファージのGSH枯渇下での細胞生存を可能にする機構の解明のため、プロテオミクス解析を行った結果、xCTKOマクロファージにおいて発現が高いタンパク質因子をいくつか同定することに成功し、現在詳細な解析を進めている。また、上記の培養系におけるxCTKOマクロファージの性質に加え、一酸化窒素産生能がWTに比べて低いことなどを明らかにした(論文投稿中)。 GSH合成においてシステインの供給が不足した場合、システインに代わって2-アミノ酪酸がGSH合成系に使用され、オフタルミン酸(OPT)を生じることが知られている。前年度確立したLC-MSによる測定系を用いた検討により、絶食マウスでは血漿と肝臓中のシステインとGSHが減少する一方で、OPTは上昇することを明らかにした(Kobayashi et al, Biochem Biophys Res Commun, 2017)。現在、LC-MSでの測定系を改良しOPTを含めたγ-グルタミル化ペプチド類の測定系を確立した。マウス組織中のγ-グルタミル化ペプチドを測定した結果、生体内において多様なγ-グルタミル化ペプチドが生成されており、それらの合成にはCysの供給や臓器の状態に大きく依存することが分かったきた。この結果はGSH枯渇によるFerroptosis過程では細胞内ではオフタルミン酸も含めた多様なγ-グルタミル化ペプチド類が合成される可能性を示唆する。
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