研究実績の概要 |
H28年度は、足場材料の曲率によって、血管内皮細胞の成長因子に対する血管新生応答を制御可能であることを証明することを目的とし、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVECs)を用いて様々な曲率(大きさ、向き)を持った微小血管を作製し、血管内皮成長因子(VEGF)に対する応答を調べた。具体的には、PDMSでデバイスを作製し、そこに足場となるコラーゲンゲル流路を作成した。この流路を作製した際に、コラーゲンゲル中に挿入するニードルの直径を120, 200, 300 マイクロメートルと変化させ、直径の異なる微小血管を作製した。作製した流路へHUVECsを導入し、ゲル表面に接着・伸展させて管腔構造を持つ微小血管を形成させた。この微小血管に、血管内皮細胞の増殖と血管新生を誘導する血管内皮成長因子(VEGF)を0または50 ng/mLとなるように添加し、7日間培養して時間経過による変化を明視野顕微鏡および、光コヒーレンストモグラフィを用いて観察した。すると、血管径が小さい直径120, 200 マイクロメートルの微小血管の方が、より血管を新生しやすいことが明らかとなった。培養後、パラホルムアルデヒドで固定、蛍光修飾ファロイジンで細胞骨格のアクチンを染色し、共焦点レーザー顕微鏡で新生血管の管腔構造を観察し、各観察法にて得られた画像を比較した。形成された新生血管は、中に管腔を有する生理的な血管新生であることが確認できた。さらに複数(n=3)の微小血管で新生血管の全体的な長さおよび内腔の大きさを経時的に測定した。また、血管の直径および体積も経時的に測定し、血管の直径(=曲率)と血管新生および血管径の変化の関係を比較したところ、血管径が小さいほど、血管径および体積の変化率が高いことが明らかとなった。本知見により、曲率によって血管内皮細胞の成長因子に対する血管新生応答が変化することが証明された。
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