2年目であるH30年度は、1年目で証明した、血管新生に適した曲率面を構築可能な小さい直径(120-200マイクロメートル)の微小血管を用いて、より生理的な血管新生現象を生体外(in vitro)で自在にモデル化できるか検討した。 ①周皮細胞との共培養による、長く・成熟した血管新生モデルの構築 細い(直径200マイクロメートル以下)微小血管を構築することで血管内皮成長因子(VEGF)に応答した血管新生を効率的に誘導可能なことを証明できたため、より長く・成熟した血管新生プロセスのモデル化が可能ではないかと考え、周皮細胞であるペリサイトとの共培養系を検討した。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVECs)と一緒にペリサイトを導入すると、自発的に血管内皮細胞層の外側(細胞外マトリックス側)にペリサイトが接着した二層構造を形成し、周皮細胞が血管内皮の周囲に裏打ちするような、体内で見られる構造を形成することを明らかとした。ペリサイト共存下では、血管内皮細胞単独に比べ、VEGFに応答して新生した血管が長く、また新生血管の周囲にもペリサイトがサポートしている様子が観察され、さらに、血管から外へ物質が漏れ出す血管透過性も抑制できることを明らかとした。以上から、血管内皮細胞と周皮細胞共培養系によって長く・成熟した血管新生モデルが構築可能であることが証明できた。 ②構築したin vitro3次元血管新生モデルの有用性評価 血管新生現象では、先端細胞(tip細胞)と柄細胞(stalk細胞)の遊走によって血管が新生していくことが知られているため、まず免疫染色することにより、新生させた血管がtipおよびstalk細胞によって構築されていることを確認した。さらに、微小血管モデルの培地中に血管新生阻害薬を添加すると、VEGF存在下でも血管新生が抑制されることを確認し、薬剤スクリーニングなどにも利用可能であることを実証した。
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