研究実績の概要 |
本研究の目的は家族機能不全状態の家族を早期発見し,支援していく上で有用な家族アセスメントモデルを検証することであり,これによってケアニーズの高い対象家族を定性的かつ定量的に捉えてスクリーニングが可能なモデルの確立の一助となりうることが考えられる. 本研究の理論基盤である家族同心球環境理論に基づいた家族環境アセスメントモデルにおけるアセスメントツールの中で,家族機能評価尺度である家族環境評価尺度(Survey of Family Environment, SFE)と家族の範囲を同定可能な家族環境地図および膨大な家族情報を系統的にアセスメント可能な質問集である家族環境アセスメント指標を用いて調査を進める予定であったが,これに代わりSFE家族症状モジュール(SFE Family Symptoms Module, SFE/FS)を用いることによって対象家族への半構造化面接の際に家族機能不全状態にあるかをより焦点化して質的に抽出できることが示唆された.SFE/FSは,対象家族の抱えている現在または過去の問題・課題・困難・苦悩を同定可能なアセスメントツールの1つである.これにより,SFEによる対象家族の量的な家族機能状態とSFE/FSによる質的な家族兆候を統合してアセスメントが可能なモデルが暫定的に確立した. このモデルの有用性を検証するために,養育期にある家族を対象としてSFEの質問紙を含む依頼文を2,165部配布し,348部のSFEを回収した.この中で半構造化面接調査にも協力可能な4家族を対象にSFE/FSを用いて質的な家族兆候を把握した.その結果,SFEによる家族機能得点がカットオフ値を上回る家族でも,SFE/FSによって家族機能が低下傾向にある状態が見られた.このことから,定量的な一方面からのアセスメントだけでなく定性的なアセスメントも含めた本モデルの有用性が示唆された.
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