本研究の目的は、医療の地域展開を含む地域ケアの成立条件を広島県尾道市の事例から明らかにすることである。方法として、文献・資料調査と聞き取り調査から、どのように地域ケアが築かれ、その成立には何が肝要であったのかを歴史的に整理する作業を採用した。 調査の結果、尾道市の地域ケアの成立には、(1)地域特性、(2)医師会の権威、(3) 理念の共有・浸透を促す巧みな戦略という3点が影響する可能性が抽出された。本研究における(1) は尾道に限られた特性だが、(2)及び(3)は他地域の地域ケア成立においても考慮の余地がある項目といえるだろう。
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