研究課題/領域番号 |
16H07148
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研究機関 | 東北工業大学 |
研究代表者 |
中村 琢巳 東北工業大学, 工学部, 講師 (20579932)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 日本建築史 / 製材 / 木挽 / 木材 |
研究実績の概要 |
本研究は近世から近代における「木挽」の変容と幕末・近代初頭における「機械製材」(水力および火力製材所)の台頭を比較的に検討し、近代建築における製材や材料調達の特徴を考察する日本建築史研究である。この着想は、木挽から機械製材への移行(製材所による木挽の消滅史)という従前の歴史観をこえて、近代以降の木挽の生産技術的な発展と機械製材化の双方に目配りすることが特徴である。これによって日本建築史研究に新たな視野を提供したいと考えている。初年度である2016年度の研究の実施実績は以下のようにまとめられる。 第一に、木挽の製材道具である前挽大鋸の形状や時代的変遷についての実物調査を行い、その成果を年度末に「竹中大工道具館研究紀要」で調査報告のかたちですみやかに公表したことである。50点におよぶ近世から近代の前挽大鋸の形状変遷を製造者ごとに分類し、その形状・機能的な特色や地域性についても検討を行った。これによって、製材技術の変遷をまずは道具の視点から把握することができた。ここで把握された知見に基づき、2017年度には木挽や製材所の技術的調査へと展開予定である。第二に、東北地方に現存する木造建築の現地調査を継続的に実施したことである。とりわけ、調査手法の特徴としては、材種や規格材の有無という視点で実測調査等に取り組んでいることがあげられる。調査対象については、地域的な特徴と時代変遷を確実に記録化できるように留意し、セレクトを進めた。多くのケーススタディが得られた地域として、宮城県登米地方の近世・近代の木造建築群が挙げられる。現地調査の対象として、江戸時代末期から明治、大正、昭和に及ぶ幅広い時代を網羅することができ、また製材と小屋組み構造形式の変遷などの比較分析への展開も準備している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である2016年度に製材道具の実物調査を実施し、その調査成果を年度末に竹中大工道具館研究紀要へ調査報告というかたちですみやかに公表した。よって、初年度に製材道具の視点での研究公表計画については当初計画通りに進捗している。 現存する歴史的な木造建築の実地調査の実施についても、研究代表者が拠点としている東北地方を対象として、宮城、岩手、秋田におよぶ林業地域を中心に、近世・近代の両時代にわたり、現存する歴史的建造物の現地実測調査に継続して取り組んでいる。これらによって、製材・材料の視点から比較分析できる木造建築のケーススタディを着実に蓄積することができた。これらによって、研究課題の最終年度である2017年度の分析・研究につなげる準備が十分にできたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は本研究課題の最終年度にあたる。東北地方に現存する歴史的な木造建築物の現地実測調査を継続し、製材や材種の視点からの情報蓄積を継続する。2016年度は研究者が拠点とする宮城を中心として現地調査に取り組み、林業地として著名な秋田地方の現地調査は比較的少なかった。よって、地域的に幅広く分析ができるよう、東北の日本海側地域の事例蓄積に計画的に取り組むことで、実地調査の効率的なアウトプットを目指したい。これとともに、2016年度に注力した製材道具調査の成果を踏まえて、伝統的な木挽の技術調査および記録化、機械製材のフィールドおよび文献的な調査を推進する。歴史的建造物調査とこれら製材技術史との比較分析の検討を意識することで、効率的な研究課題の推進を行う。
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